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ジョン・マッデン監督「エリザベス・スローンは最高のキャラクターだ」

映画『女神の見えざる手』ジョン・マッデン監督インタビュー
ジェシカ・チャステインは埋もれたダイヤだった

女優ジェシカ・チャステインが主演する映画『女神の見えざる手』のジョン・マッデン監督がインタビューに応じた。ジェシカについて「驚くほど才能のある役者」だと称え、「主人公エリザベス・スローンは監督にとって最高のキャラクターだ」と話す。脚本の魅力や物語の見どころにも言及した。

ジョン・マッデン監督、映画『女神の見えざる手』撮影現場にて
©2016 EUROPACORP-FRANCE 2 CINEMA

ジェシカ・チャステインについて

ジェシカ・チャステインは驚くほど才能のある役者だ。内面の感情の動きが手に取るように分かる。動作でいちいち表現しなくても気持ちが伝わる。特別な才能だと思う。感情をどこで表現すべきか的確に見極め、自在に調整できる。だからこそ、エリザベス・スローン役はジェシカ・チャステインにぴったりだし、今回の主役は彼女しかいないと思ったよ。脚本を読み、すぐに決めた。僕らは以前にも一緒に仕事をしたから、お互いへの理解がある。それは映画『ペイド・バック』(原題 The Debt /2010年/日本未公開)で、当時は『ツリー・オブ・ライフ』(テレンス・マリック監督)の撮影は終わっていたが、まだ公開はされていなかったから、彼女は有名人じゃなかった。その頃のジェシカは僕にとって埋もれたダイヤだった。当時から彼女の実力には驚いていた。そして初めて本作の打ち合わせをした日にジェシカ側から連絡があった。僕はあるイベントでニューヨークにいたんだが、「脚本が気に入ったから出演したい」とね。とにかく彼女はあふれる才能の持ち主だ。この役には重要なことだ。

「驚き」に満ちた脚本

本作の脚本が持つ最強の武器は、ネタバレになってしまうが、「驚き」に満ちていることだ。予想できるような方向には決して進まず、思いもよらない展開が続いていく。実によくできた脚本だ。台詞がごく自然な会話になっている。アイロニーや間接的な表現が多く、ウィットに富んでいて非常におもしろい。だが、一番の売りは「驚き」だろう。すべてが策略によって進められる業界だからね。だからこそ本作には他とは違う魅力がある。そして、2番目の特徴として挙げたいのは、キャスティング中に気づいたんだが、複数の物語が同時進行し、魅力的な人物が大勢登場することだ。ロビー活動のポイントはいかに他人を感化し、賛同得るかということなんだ。そのためにはあらゆる手を尽くす。最近ではすっかり評判の悪い仕事だ。

主人公は業界の裏の面も利用する

映画が小説より優れているところは、総合的なメディアだから、登場人物の心の中に入りやすい点だ。彼らの視点を体験できる。本作の主人公エリザベスは少し変わったキャラクターだ。特殊な職業に就き、普通ではない働き方をする。ある意味、古典的なアメリカ映画だと言えるね。僕にとって今回の脚本の魅力は業界をのぞき見るようなストーリーだ。ドアの鍵穴から見ているような感じだね。ロビイストの仕事を知る人は少ないと思う。普通の人には全く分からない世界で、説明も難しい。だが本作を観ることによって業界の実態も分かるだろう。良くも悪くも、これはアメリカの政治の一部であり、彼らは絶対に欠かせない存在だ。それだけでも興味深いが、本作にはさらに別の見どころがある。主人公が業界の裏の面までも徹底的に利用する点だ。僕たちはそんな姿にどこか魅了されてしまう。そしてこれも本作の重要な要素の一つだが、物議をかもすような題材が扱われている。結局のところ、本作が描いているのは、主人公の人となりだと思う。ある人物の驚くべき生き方を追っていく物語だよ。

ジョン・マッデン監督(中央)
©2016 EUROPACORP-FRANCE 2 CINEMA

主人公エリザベス・スローンは最高のキャラクター

主人公エリザベス・スローンは監督にとって最高のキャラクターだ。彼女はすっかり仕事に取りつかれている。お気づきのとおり、彼女は目的のためなら、なりふり構わず行動する。彼女の言動の動機は、どうしても議論に勝ちたいという意地と法案を勝ち取ることだ。けれども、彼女は業界のアウトサイダーで、ルールに従うことを拒絶している。どこまでも世の中の流れに逆らって進む人間だ。そう聞いて、普通、頭に浮かぶのは男性だろう。だが、本作の場合は男性ではなく女性だ。そしてこれも特筆すべきことだが、この女性キャラクターが中心となって物語が展開する。普通なら男性が演じるような役だよ。彼女は、とてつもないエネルギーの持ち主であり、そのすべてを仕事に注ぐ。ほとんど休むことなく。

エリザベスと親しくなる相手にはある共通点がある

主人公と特別な関係を築くのがググ・ンバータ=ローが演じているエズネという女性だ。これは間違いないと思うが、エリザベス・スローンという人物が親しくなる相手にはある共通点がある。昔の彼女と似ていることだ。最初の会社でもそうだった。そこではアリソン・ピルが演じたジェーンという女性と親しかった。

ジョン・マッデン監督/製作総指揮

1949年、イギリス、ポーツマス生まれ。イギリスのTVシリーズ「主任警部モース」や「シャーロック・ホームズの冒険」などの演出を手がけ、1993年、『哀愁のメモワール』で長編映画を初監督。『Queen Victoria 至上の恋』(97)を経て、長編監督4作目の『恋におちたシェイクスピア』(98)がアカデミー賞?作品賞を受賞する。その後、『コレリ大尉のマンドリン』(01)、『プルーフ・オブ・マイ・ライフ』(05)、『キルショット』(08/日本劇場未公開)、『ペイド・バック』(10/日本劇場未公開)、『マリーゴールド・ホテルで会いましょう』(11)、『マリーゴールド・ホテル 幸せへの第二章』(15)を監督。スティーヴン・スピルバーグ監督の『BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』(16)では製作総指揮を担当し、脚本にも参加した。キャリアの初期は舞台での演出がメインで、ロンドンのナショナルシアターやNYブロードウェイで演出家として活躍。「プルーフ・オブ・マイ・ライフ」は、映画版と同じグウィネス・パルトロウを主演に舞台版も演出した。

映画『女神の見えざる手』(キノフィルムズ配給)は2017年10月20日[金]よりTOHOシネマズシャンテほか公開

映画『女神の見えざる手』公式サイト
公式SNS 映画『女神の見えざる手』facebook
映画『女神の見えざる手』(原題 Miss Sloane )作品情報・予告編

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