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長澤まさみ主演×矢口史靖監督『ドールハウス』“カタギリくん”と“アヤちゃん”とは?

長澤まさみ主演×矢口史靖監督『ドールハウス』“カタギリくん”と“アヤちゃん”とは?

矢口史靖監督が原案・脚本・監督を務めた映画『ドールハウス』が第45回ポルト国際映画祭で最高賞のグランプリ「Best Film Award」を受賞し、凱旋報告会を東京ポートシティ竹芝にて開催した。矢口監督が「背筋が凍るようなゾクゾクする物語を初めて作りました」と語る、そんな注目作には、“カタギリくん”と“アヤちゃん”が関わっているという。いったいどういうことだろか。

映画『ドールハウス』が第45回ポルト国際映画祭で最高賞のグランプリ「Best Film Award」を受賞

『コンフィデンスマンJP』シリーズなど日本を代表する長澤まさみが、『ウォーターボーイズ』『スウィングガールズ』など多くのエンタメ映画を世に送り出してきた矢口史靖監督とタッグを組んだ本作。5歳の娘・芽衣を亡くした鈴木佳恵(長澤まさみ)は、悲しみに暮れていたものの、骨董市で見つけた芽衣によく似た愛らしい人形をかわいがり、元気を取り戻してゆくが……実はその人形には謎があり……というもの。

この日のイベントで長澤は、本作に登場する謎の人形“アヤちゃん”を抱いて、矢口監督は、ポルト国際映画祭のトロフィーを手にして登壇。まず、“アヤちゃん”は、本作に登場する人形の名前だ。「いつかオリジナル脚本でミステリーを撮りたい」とアイデアを温めていた本作は、愛らしい人形の“アヤ”が一転、家族を翻弄してゆくスリリングな面白さはもちろん、人形に隠された秘密が徐々に解き明かされる謎解きの醍醐味もあり、冒頭からぐいぐい観客を引き込んでゆく。

矢口監督が、「失礼ながら、俳優さんたちよりもアヤちゃんを見ている時間の方が長かったと思います。毎日人形を酷使するので、塗装が落ちていくので、俳優さんたちと同じように、毎日メイクさんがアヤちゃんのメイクをしていました。なので、日々アヤちゃんの表情が変わっていって、そこがまた面白いです」と語れば、長澤も「私もアヤちゃんに対してすごく信頼があって、一緒のシーンは『一人じゃないな』って思っていました。今もアヤちゃんを抱いていますが、アヤちゃんは結構重量感があるので、抱きかかえるのが大変なんです。でも、逆にそうであるからこそ、大事にしたくもなります」と笑顔で答えた。また、監督にとって「一番長く現場にいるのに、文句を言わない!」のだとアヤちゃんの長所をあげると、長澤も「そうですね。でも、目で訴えかけてきますよ!」とさらり(ニヤリに近い)。たまらずに監督が「やめてよ(笑)」というやりとりが行われ、会場に笑いが起きていた。

そして、“カタギリくん”というのは……物語の成り立ちに関係している人物だとして、矢口監督が振り返る。「最初にこのストーリーを目にしたのは、“カタギリくん”という新人脚本家が僕に脚本を見せてくれた時でした。それがすこぶる面白くて、ゾクゾクしつつ、ワクワクする感じがしたんです。先の展開が気になって仕方がないストーリーでした。『これは面白いから映画にできないかな?』と、プロデューサーに連絡したところ、『これはいける!』とすぐに返事が来ました。トントン拍子に話が進んで、『誰に演じてもらおうか?』などと話していたのですが、ある時プロデューサーから『“カタギリ”という脚本家をいくら検索しても、仲間や他の人に聞いても、誰も知らない。これは誰なんだ?』と聞かれたんです。どんどん追い詰められて、ついに『“カタギリ”は僕です』と嘘をついていたことを白状しました。そこから“カタギリ”はいなくなり、僕が監督をすることになりました」。“カタギリくん”は矢口監督ご自身のこと。分身というか、別人格のような立ち位置ともいえるだろうか。

鈴木佳恵(長澤まさみ)とアヤちゃん
©2025 TOHO CO., LTD.

これを聞いて、会場にいたほぼ全員が同じことを思ったであろう疑問を、この日のMCが代弁した。「矢口監督が『自分が書いた』と言った方が、企画が通りやすいように思うのですが…?」と。長澤も「私もそう思います」と同意しつつ、「何で、そんなことをしたんですか?」と問いかけた。すると矢口監督は、「いや、その方が良いと思ったんです」と真顔で返答。そして「最初のご挨拶でもお話しましたが、僕はずっとコメディや、ハッピーな作品、お客さんを幸せにするような作品ばかりを作ってきました。なので、いきなり本作のようなゾクゾクする作品を公開したら、お客さんがドン引きするんじゃないかと思ったんです。僕は『人でなしだ!』と思われたくなかったし、嫌われるのが嫌でした」と説明した。それで「『“誰かが作った作品”にできないかな?』と思ったんです。『脚本も撮影現場もカタギリさんがまとめて、舞台挨拶に立つのもカタギリさんで何とかできませんか?』と、プロデューサーに相談したところ、『できるわけないだろ!』と怒られて、この場に立っています(笑)」と明かしたのだった。

それだけで、どのような物語を書いたのか、気にならずにはいられない。この日、長澤は「脚本読んだ時に、この物語にどっぷりと浸ってしまいました。この物語がどんな展開を迎えるのか、ワクワク、ドキドキ、ゾクゾクしながら、作品にのめり込んでしまいました。皆さんにもその感覚を味わっていただけると思います」と教えてくれた。

長澤と矢口監督は、映画『WOOD JOB!~神去なあなあ日常~』ぶりとなるそうだが、本作のキャスティングでは矢口監督はシナリオを書き終えてすぐに「今回は長澤まさみさんに主演をお願いしたい」とプロデューサーに伝えたという。脚本を読んだ長澤が出演を快諾し、監督は「こんなに企画が決まるのが早い作品は初めてでした」と嬉しそうに明かした。

ヴェネチア観光・カナル・グランデ運河にて
©2025 TOHO CO., LTD.

「今回の佳恵役は、若いお母さんの役ですが、ものすごいどん底と、感情が上がった幸せな状況を、行ったり来たりして、感情がぐるぐる変わっていくんです。なので、『そのメリハリを表現できる人って誰かな?』と思った時に、『長澤さんしかいないだろう』と思ってお願いしました」と起用理由を述べ、その結果にも触れた。「予告編の最後の方にチラッと長澤さんの叫び顔が映りますが、僕はそれを『ムンク顔』と呼んでいます。そのムンク顔が、本作の冒頭、タイトルが出るまでの一番つかみのシーンでドカンときます。ここで観客にショックを与えられないと、その後も観続けたいと思ってもらえないのですが、ムンク顔のおかげで、つかみの部分はバッチリです。途中で観るのを止めるわけにはいかないというか、たぶんトイレも行けないんじゃないかと思います。こういうゾクゾクする系の作品って、【直接そのものを見せるタイプ】の作品もあると思うんですが、本作はどちらかと言うと【それを見てしまった人の顔を見せるタイプ】です。なので、その表情が生ぬるかったら、観客も全然ゾクゾクしないですからね。ファーストシーンのつかみや、中盤は何回も出てきますが、長澤さんのムンク顔を目に焼き付けてほしいです。『こんな顔もできるのか!』と、楽しみにしてほしいです」。

第27回ウディネ・ファーイースト映画祭のコンペティション部門上映会
©2025 TOHO CO., LTD.

なお、第27回ウディネ・ファーイースト映画祭のコンペティション部門に正式出品された本作だが、4月25日実施のオープニングセレモニーでは矢口監督がアヤちゃんと出席。27日夜は上映会場のテアトロ・ヌォーヴォにて舞台挨拶と上映会が実施された。1,000人以上の観客が詰めかけ、2階席、3階席も埋まり、会場は異様な熱気に包まれた。映画祭の各部門の優秀作品賞は、日本時間5月2日に発表予定。

映画『ドールハウス』(東宝 配給)は2025年6月13日[金]より全国公開
©2025 TOHO CO., LTD.

映画『ドールハウス』あらすじ・作品データ

5歳の娘・芽衣を亡くした鈴木佳恵(長澤まさみ)と夫の忠彦(瀬戸康史)。哀しみに暮れる佳恵は、骨董市で見つけた、芽衣によく似た愛らしい人形をかわいがり、元気を取り戻してゆく。だが佳恵と忠彦の間に新たな娘・真衣が生まれると、2人は人形に心を向けなくなる。やがて、5歳に成長した真衣が人形と遊ぶようになると、一家に変な出来事が次々と起きはじめる。佳恵たちは人形を手放そうとするが、捨てても捨てても、なぜかその人形は戻ってくる……!人形に隠された秘密とは?そして解き明かされる衝撃の真実とは――!?(2025年/日本映画/110分)
原案・脚本・監督:矢口史靖
出演:長澤まさみ 瀬戸康史
    田中哲司
    池村碧彩 本田都々花 今野浩喜 西田尚美 品川徹
    安田顕 風吹ジュン
主題歌:ずっと真夜中でいいのに。「形」(ユニバーサル ミュージック)

映画『ドールハウス』予告編


©2025 TOHO CO., LTD.

映画『ドールハウス』公式サイト
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