大沢たかお『沈黙の艦隊 北極海大海戦』続編製作の難しさ語る
映画『沈黙の艦隊 北極海大海戦』完成報告会が、リッツ・カールトン東京 ボールルームにて開催。大沢たかお、上戸彩、中村蒼、松岡広大、前原滉、渡邊圭祐、風吹ジュン、夏川結衣、江口洋介、吉野耕平監督、原作者のかわぐちかいじ氏が登壇。主演兼プロデュースの大沢は、続編製作の難しさについても語った。
映画『沈黙の艦隊 北極海大海戦』は、1988年から1996年まで週刊漫画雑誌「モーニング」(講談社)にて連載された、かわぐちかいじ著の人気コミックを実写映画化した『沈黙の艦隊』(2023年公開)の映画化第2弾。映画『沈黙の艦隊』、そしてドラマシリーズ「沈黙の艦隊 シーズン1 ~東京湾大海戦~」(2024年よりAmazon Originalドラマシリーズ配信/全8話)から続く物語になっている。
シリーズへの反響について大沢が語る。「おかげさまで、映画の劇場公開と、全8話の連続ドラマの配信は、とてもたくさんの方に観ていただいて、反響もすごく大きかったです。しかも、世界でも配信されていたようで、海外に行った時に「KAIEDA!」と声をかけられることもありました。改めてこの作品の力に驚かされている部分もあります。比較的男っぽい話なので、女性の方に喜んでもらえなかったらと思うこともありましたが、特にドラマのほうは、たくさんの女性の方にも観ていただけました。いろいろな社会問題に、男女ともに関心が高いんだということを改めて感じました」。
そして「この企画の始まりは、5年ほど前だったので、まだロシアやウクライナの問題が起きていませんでした。こうした題材を取り上げることが、本当に時代に合っているのかなというスタートでした」と振り返り、続編となる映画化第2弾について「続編は、ゼロからのスタートより難しいです。ある種のサプライズ的なものは、最初にやり尽くしてしまっているので、マイナスからスタートするような感じでした。でも、この北極海大海戦のプロットは、僕が一番好きなブロックなので、『ここは絶対に落としたくない!』と思っていました。地上では「やまと選挙」という総選挙が行われ、『ここは映像化を成功させたい!』と強い思いを抱いていました。ですから、僕だけでなく全員がパート1の『沈黙の艦隊』の時とは別の顔をして現場に来ていた感じがして、すごく頼もしかったです」と明かすのだった。
その“頼もしさ”についても、詳しく話してくれた。「今回は本当に<やまと>クルーの一人一人にスポットが当たっています。前作の時とは少しやり方を変えて、本人たちに喋りかけるように位置を変えましたが、前原さんだけは、どうしても後ろになるんですよね。何とか見ようとするんですが、目が合わない。彼はずっと役を変えずに通してくれているので、自分としては本当に信頼ができるソナーマンであり、信頼できる俳優です。安心してセリフを投げられるチームで、本当に<やまと>のメンバーたちは最高で素晴らしいです。特に前作よりも全員がより人間っぽくなってパワーアップしていると思います」。
さらに主演兼プロデューサーとてしての持論も。「前作を観た方には海江田のイメージが出来上がっているから、それを破壊していかなければなりません。この『沈黙の艦隊』を、別のステージに上げるには、新しい要素を入れていかないといけないので、前作以上にすごく悩みました。最初の台本を作りたての頃に、別のプロデューサーから『吉野監督があまり乗っていない」という話を聞きました。やはり続編は難しいですし、特にこの北極海の部分と選挙の部分の映像化は難しいので、自分も悩んでいたぐらいです。「だったら一度会いませんか?』とプロデューサー2名と監督と僕の4名で会いました。その時に、自分が続編でやりたい海江田像をお話ししました。抽象的な言い方でしたが、吉野監督には『それは面白いですね』と言っていただけて、何とか現場に来ていただくことが出来ました。それぐらい本作の部分はすごく大事なブロックでした。監督は絶対に失敗できないし、僕も悩んでいました。そういう意味では海江田像だけではなく、『沈黙の艦隊 北極海大海戦』の出来映えに繋がるので、緊迫感が伝わって、自分もスイッチが入りました。『これは、前作以上に海江田に魂を込めないと成立しないな』と思いました。
吉野監督の考えも伺えた。当該シーンの原作は、「海江田の戦術と、バトルものとしての面白さ、それに政治も動くところなので、周りにファンが多いです。原作の話をする時には、かかせないくらいに本当に好きな箇所です」とし、「前作の反響が大きかったので、その先を作った時に、それを超えられるのかということですかね。それから、シーズン1から先の物語は、原作の中でも僕が好きな箇所だったので、『それをやって良いのか?』と言う葛藤がありました。ただ、人に任せるよりは自分でやりたいという欲望といいますか、夢の方が大きかったです。なので、頑張ってチャレンジさせていただきました」。
原作者のかわぐち氏は「描いている時に、『こんなことを描いて良いのか?』、『実際に起こり得るのか?』とハラハラしながら描いたシーンが1か所あるんです」と打ち明ける。「それが映画でどう描かれるんだろうと思っていましたが、見事なシーンになっていました。ものすごくカッコ良いシーンになっていたので、喝采しました」と笑顔を見せた。かつ「……それがどのシーンのことかは予想して楽しんでください」と微笑む。また、「描いている時は、北極海での戦闘なので荒涼とした海の世界ですよね。だから寒いはずなんですが、描いていても戦闘自体がすごく熱くて、寒いと思うことはありませんでした。同時に「やまと選挙」が日本で行われ、これも冬なんですが熱かったんです。映画でも何か熱いものが伝わってきて、これは完璧、いえ、完璧以上になっていました」と絶賛コメントを残していた。
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©かわぐちかいじ/講談社
ほか登壇者の皆さまのコメントを一つでも多く載せるために、下記に抜粋しました。
前作で私はテレビ局に勤めるキャスターの役でしたが、今回の『沈黙の艦隊 北極海大海戦』ではキャスターを辞めて、自分の足と目で真実を追うフリージャーナリストとして、海江田と<やまと>を追求していきます。彼女のバックグラウンドとして、娘や家族が登場することで、人間の弱さ、怯えるシーンもあり、人間らしさを表現できたことが良かったと思っています。
原作は、かわぐち先生が描いてくださった30年前の作品ですが、現代と重なっている部分もあって他人ごとではないと感じました。情報がたくさん溢れている今の世の中で「どこに観点を置いて、何を軸として、何を信じていくのか」ということを考えさせられました。まさに、今観るべき作品だと思います。観る人が感情を重ねやすい市谷役を演じられたことに、改めて感謝でいっぱいです
海江田さんに、また会えてうれしかったです。海江田さんは圧倒的な信念とカリスマ性を持っているので、やっぱりお芝居でだけではなく、その人自身が持つ人間力が必要とされる役だと思います。そんな海江田を演じられるのは、大沢さんだけだろうなと思って、大沢さんの背中を見ながらお芝居をさせてもらいました。
真面目な話が続く中ですが、大沢さんは体重管理をされていて。現場に置いてあった二枚一組のサンドイッチを大沢さんから「半分こにして食べようよ」と声をかけていただきました。艦長と半分こして食べたサンドイッチは、いままで食べたサンドイッチの中で一番おいしかったです!!
ドラマ版を一気見してくださった方から「政治の部分と戦闘シーンとがシームレスになっているので、飽きることなく観ることができた」と、うれしい感想をいただきました。
僕の中では、副長が母で艦長が父だと思っています。大沢さんが演じる海江田は、父の威厳が高まっていて、現場でいろいろと支えていただきました。俳優としてもそうですが、プロデューサーとしても現場を良くしようとする気持ちを、我々も感じていました。並々ならぬ努力と研鑽があって、ご苦労もあるはずなのに、それを感じさせず、我々には柔らかく接してくださいました。本当に海のような広い心を持った方だという印象です。
撮影の初日に「お久しぶりです」とご挨拶をしたところ、「今回は入江にかかっているからね」と柔らかい口調でお言葉をいただきました。それでちょっと緊張して心臓が痛くなりました(笑)。でも、シャキッとして良い緊張感を持ちながら大事なシーンが撮れました。
自分で言うことではないんですが、溝口役をやっていると「カッコ良い!」と言ってもらえることが多いんです。僕は、変な役を演じることが多かったので、「カッコ良い役はありがたいな」という気持ちがありました。シーズン1に出演したことで、カッコ良さのある役も来るようになったので、作品への感謝があります(笑)。なので僕にとっては、全てにおいてすごく反響のある作品だなと思っています。
今回は、海江田さんから溝口に直接指示をいただくことがありました。でも、僕らは基本的にソナーの画面を見ているので、あまり目を合わせてお芝居をすることがありません。直接指示をされる場面では、背中から大沢さんの重みを感じました。でも、できれば目を合わせたいなと思いながら、ずっと<やまと>に乗っています。
「よっしゃ!<やまと>に乗れる!」ってワクワクしていたんですが、気がついたらヘリコプターに乗っていました。「人生何があるか分からないなぁ」っていう気持ちです。
僕らジャーナリスト組は視聴者の目線に近いと思います。リアルなものを体験しているんじゃないかと思いました。<やまと>の外側・政治の外側にいて海江田に突き動かされるんですが、その何かパッションのようなものを感じられるような、若者の持っている内面のパワーみたいなものが出せれば良いなと思って演じました。
私はオファーに驚きました。どちらかというと、ファンの立場でしたから、かぶりつきで配信を観ていました。なので、本作に声がかかった時は、「誰のお母さん役?」「誰のおばあちゃん役?」って気持ちでいました。でも、アクション・ポリティカル・エンターテインメントのポリティカル部分だったので、「私が政治家役?」となりました。「ちょっと、私で大丈夫かしら?」と思いながら、衣装合わせに向かったことを鮮明に覚えています。監督にはずいぶん支えていただきました。与党の女性幹事長はまだ現実にはいらっしゃらないので、女性の議員の方を参考にしました。「一歩も後に引かないこと」「どんな言葉も必ず正義であること」を自分に戒めて、セリフを言いました。
街頭演説をするシーンがあるんですが、その撮影の時にエキストラの方がたくさん集まっていただいたので、作品がどれだけ人気があるのかを感じました。
<やまと>とアメリカの潜水艦の攻防のシーンは、本当に素晴らしいです。内容を知っているはずなのに、試写で息を止めて観ていることが何度もありました。アメリカの潜水艦の艦長のエピソードに感情移入したりして、意外なところでグッときました。ですから、女性の方も十分に楽しめる作品です。人の触れ合いを描くエピソードにグッときて、人間ドラマとして印象に残りました。
前作『沈黙の艦隊』の時に、「これは超えられる!」と思いましたし、本作『沈黙の艦隊 北極海大海戦』ではパワーアップしていると感じていただけると思います。
大沢くんはずっと動かないストイックな芝居をされていて。先ほど上戸さんがおっしゃった「人間の弱さ」という部分では、津田健次郎くんがやっている突拍子もないことをする政治家に、一人の老人が「頑張って」と話しかけ、その老人が帰る時のワンカットがあることによって、グッときました。
大沢くんたちの戦いのスケール、僕ら政治家の戦いのスケール、本当にエンタメとして心地よく観せてくれます。試写で本作を観て、すごく良い作品だなと思いました。
映画『沈黙の艦隊 北極海大海戦』(東宝 配給)は2025年9月26日[金]より全国公開
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映画『沈黙の艦隊 北極海大海戦』あらすじ・作品データ
冷たく深い北の海を、モーツァルトを響かせながら潜航する<やまと>。<大>いなる平<和>と名づけられた原子力潜水艦は、米第7艦隊を東京湾海戦で圧倒し、ニューヨークへ針路をとった。アメリカとロシアの国境線であるベーリング海峡にさしかかったとき、背後に迫る一隻の潜水艦……。「核テロリスト<やまと>を撃沈せよ――」それは、米国のベネット大統領が送り込んだ、<やまと>の性能をはるかに上回るアメリカの最新鋭原潜であった。
時を同じくして、日本では衆議院解散総選挙が行われる。<やまと>支持を表明する竹上首相は、残るも沈むも<やまと>と運命を共にすることとなる。海江田四郎(大沢)は、この航海最大の難局を制することができるのか。(2025年/日本/132分)
主演:大沢たかお
出演:上戸彩 津田健次郎
中村蒼 松岡広大 前原滉 渡邊圭祐
Torean Thomas Brian Garcia Dominic Power
Rick Amsbury 岡本多緒 酒向芳
風吹ジュン 夏川結衣 笹野高史 江口洋介
原作:かわぐちかいじ「沈黙の艦隊」(講談社「モーニング」)
監督:吉野耕平
脚本:髙井光
音楽:池 頼広
主題歌:Ado「風と私の物語」作詞・作曲:宮本浩次 編曲:まふまふ
製作:Amazon MGM スタジオ
制作プロダクション:CREDEUS
映画『沈黙の艦隊 北極海大海戦』予告編
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映画『沈黙の艦隊 北極海大海戦』公式サイトhttps://silent-service.jp/
公式SNS X(旧Twitter )@silent_KANTAI| Instagram | TikTok
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