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芦田愛菜『果てしなきスカーレット』生きること愛することとは?

芦田愛菜『果てしなきスカーレット』生きること愛することとは?

細田守監督の最新作『果てしなきスカーレット』のジャパンプレミアが11月5日、東京国立博物館・表慶館で開催され、芦田愛菜、岡田将生、染谷将太、宮野真守、吉田鋼太郎、斉藤由貴、松重豊、細田守監督が登壇。芦田は「たくさんの解釈があると思います。ぜひ映画館で「生きること、愛することとは?」と一緒に考えていただけたらうれしいです」と話していた。

細田守監督の最新作『果てしなきスカーレット』のジャパンプレミアが11月5日、東京国立博物館・表慶館で開催

映画『果てしなきスカーレット』は、主人公の王女・スカーレットが父の復讐に失敗するも、死者の国で再び、宿敵に復讐を果たそうとする物語。シェイクスピアの代表作「ハムレット」に着想を得た本作で、テーマは、“生きる”とのこと。ちなみにハムレットのレットにちなんで、王女の名をスカーレットにしたそう。既に、ヴェネチア国際映画祭にも招かれ絶賛されている。細田監督は「やっと日本の皆さんにも観ていただける日が来ました。日本の皆さんのために作った作品ですので、今日はとてもうれしく思っております」と笑みを浮かべていた。

細田守監督、最新作『果てしなきスカーレット』を語る

「今回は、僕らが作ってきた作品の中でも、一番スケールの大きい作品です。内容も表現も座組的にも大きな挑戦があり、挑戦尽くしの作品でした。そのために、作るのに四年半ぐらいかかってしまったんですが、根本にあるのはスカーレットという一人の女性の話です」と話す。ところが着想は、「僕の9歳の娘が、『これからこの世界で、どうやって生きていくんだろうか?』『今は頼りないけれど、だんだん力強く生きて未来を目指してほしい』という思いが根本にあって、本作を作ることができました。だから、非常に大きな作品になりましたが、スタートはとても身近なところから始まりました」と明かした。

そんな本作でスカーレット役の芦田。「最初に、監督とお話しをした時に、「スカーレットは19歳の設定ですが、現代を生きている19歳と、中世を生きる王女としての19歳では持っている覚悟や自覚が違うだろうから、その違いが出ると良いな」というお話をいただきました。それを聞いて「どうやってやれば良いのだろう?」と、悩みながらでしたが、中世を生きた“ジャンヌ・ダルク”や、“エリザベス一世”の作品に触れて自分の中で作り上げていきました。「このシーンは体当たりじゃないとできないだろうな」というシーンもたくさんありましたが、声を吹き込むというよりは、魂を吹き込むような気持ちで向き合った作品になりました」と振り返った。

ヴェネチア国際映画祭での反応について、監督は「シェイクスピアの物語は、海外では学校で習うところもあり、とても馴染み深い物語です。あるジャーナリストからは、『今回は、アクションで、復讐劇で、尚且つハムレットなので、とてもエンターテインメントなんですね』と言われました」とのこと。

芦田愛菜と岡田将生がバルコニーに登場

そこで、“演劇界”出身の吉田と松重が、この日に語った「ハムレット」について紹介していく。

松重
僕は、二十代の頃に蜷川幸雄の劇団「蜷川スタジオ」に入って、最初に渡辺謙さん主役で「ハムレット」を上演しました。その時は、坪内逍遥さん訳のセリフは文語調で、小田島雄志さん訳のセリフは口語調で、役が本音で語っている時は口語調ですが、建前の時は文語調で演じる演出で、今日のような赤い雛壇の上で演じました。蜷川さんは、「シェイクスピアはその時の時代を写す鏡だ」として、1980年代当時はその時の社会を舞台上で表していました。シェイクスピアの作品は、そういう力を持っているし、そういうことで、僕らの肉体が動くことが分りました。
それから5、6年後に「ハムレット」を上演した時は、翻訳家の松岡和子さんが、その場で役を作りながら戯曲に向き合って、役者と一緒に作り上げました。その時の主演は真田広之さんでした。その後の渡辺謙さんと真田広之さんの活躍を考えると、芦田さんが、世界に羽ばたく姿が目に浮かぶようでうれしいです。それくらい、僕らにとって「ハムレット」という作品は大きいです。
面白いのは、吉田さんと僕の演じるヴォルティマンド役とコーネリウス役が、「ハムレット」の中では本当に端役なんですよ。

吉田
いわゆるワンシーンだもんね!

松重
二幕一話のワンシーンしか、出てこない。

吉田
だから、オファー来た時に「なんだヴォルティマンド役か……」と思ったら(笑)……そしたらね…!

松重
そう! それは観てのお楽しみなんですが、ここまであの役を広げていただいて。
トム・ストッパードの戯曲「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ」っていう作品があるんですが、本作はその戯曲のようで、「ハムレット」から派生した現代を写す鏡として、本当に生き生きと息づいています。そこをこれから観て、立ち会っていただければと思います。

というものであった。
なお、岡田も舞台で「ハムレット」を演じているため、「ハムレット」を知る者が多い本作の声の出演者は強力な布陣だったと言えるだろう。さらに登壇者の視点も幅広い。

「僕自身、声優は初めてで、すごいチャレンジをさせてもらったお仕事です。ヴェネチア国際映画祭は、映画愛がすごく溢れていました。観客の皆さんと一緒に、同じ劇場の空間で『果てしなきスカーレット』を観た経験は、一生忘れられない時間だと思います」(岡田)
「僕も細田作品のファンですし、今回も参加できて光栄です。本作は、全ての人々が当事者であり、関係者なのではないかと思いましたし、心を打たれました。本作の続きが、この世界の未来につながっていくんだと、心から感じました。ですので、世界中の方々に観てもらいたいと思いました」(染谷)
「僕は、声優として数々の作品に携わらせていただき、いろいろな映像を観てきました。その中で、「まだまだ観たことのない表現があるんだ」と、本当に驚かされました。日本のアニメーションが海外で認められている中でも、技術の向上を諦めない監督の胆力は素晴らしいと思います。細田監督の作品には、多く携わっていますが、印象的なのは家族の姿です。毎作品に描かれていて、その愛は、きっとそれぞれが持っているものだと思います。本作の愛も、普遍的なものをテーマにしているからこそ、観る人の心に訴えかけるような、「なくしちゃいけない思い」を感じ取ってもらえると思います。そんな家族愛や愛の大きさを受け止めてもらえればと思います」(宮野)

ブルーにライトアップされた東京国立博物館・表慶館、このあとピンク色に

「物語の素晴らしさは、皆さんが言及しているので、私は細田監督の“ものづくりへの姿勢”についての素晴らしさをお伝えしたいです。この場所でジャパンプレミアをするのは、とてもふさわしいと思いました。本作は、アニメーションの規制概念を超えた、ものすごく芸術性の高い作品だと思います。それに、監督は本作で、挑戦というか実験をされている印象を受けました。時には、日本画のようであったり、洋画のようであったり、デジタルであったり、アナログであったり…、細く繊細な線と、野太い版画を切り取ったような線を組み合わせたのは、まさに「実験」だと思いました。その表現は、大胆かつ究極まで突き詰められていて、監督は完璧を求めて、絶対に隙がないように最後まで考え抜いているのではないかと思いました。
表現の仕事をする者として、この隙のない高みを目指すこと、完璧を目指すことの重要さは感じています。今回は、一ファンとしてそういった姿勢に触発されました。そして、作品には感動いたしました」(斉藤)
「実は、本作を観てから、今までずっと厳かな感動が続いています。そうした作品に出られてうれしいです。「人が人を許すこと」「人が人を殺してはいけないこと」「復讐してはいけないこと」「ましてや復讐の連鎖は許されないこと」それが絶対的なテーマです。人間にとっての普遍的なテーマであり、全く解決されていない世界で、細田監督が、そのことに真っ向から切り込んだ作品です。これを世界に発信する勇気に、心からエールを送りたいです。本当に素晴らしい作品です。皆さんもぜひご期待くださいませ」(吉田)
「両端の“演劇じじい”と呼ばれる僕らは、お芝居で育ってきたものですから、吉田さんの言葉は非常に重く響いています。
本作はアニメで、現代の作品で、しかも声でしか参加していないんですが、作品を観た時に、舞台を観た時のような、ものすごい感動と腰が抜けるような思いをしました。そんな作品を野外劇のようなこういう場所で、お披露目できるのは本当にうれしい。今日は皆さんにぜひ楽しんで帰っていただきたいと思います」(松重)

ピンクにライトアップされた東京国立博物館・表慶館

スカーレットを演じた芦田にとって、この映画の持つ「生きる意味」をどのように捉えているか。

芦田は、「先日、ある物語を読んでいて、一説に『人生の意味より、人生そのものを愛せ』という会話がありました。これは、まさに私が本作を観て思ったことだと思いました。スカーレットは自分で自分を傷つけ、『こうあらなければいけない』と縛られて生きた女の子ですが、死者の国での旅や聖との出会いを通じて、自分の人生を愛せるように、自分自身を愛せるようになっていく作品だと思います。人生の愛を見つけられた時、自分の人生を使ってどう生きていきたいかという、生きる意味が見出せるのではないかと感じました。『意味を持って生きなくてはいけない』のではなく、『生きること自体に意味があって、生きることは愛することなのではないか』と感じます」と、すらすらと述べた。
さらに「この作品を観てくださった皆さんも、たくさんの解釈があると思います。ぜひ、映画館の中で、『生きること、愛することってどんなことだろう?』と、スカーレットの生きる世界に思いを馳せながら、一緒に考えていただけたらうれしいです」と呼びかけて、イベントは幕を閉じた。

映画『果てしなきスカーレット』(東宝 配給)は2025年11月21日[金]より全国公開
©2025 スタジオ地図

©2025 スタジオ地図

映画『果てしなきスカーレット』あらすじ・作品データ

死んで、生きて、愛を知った。
父の敵(かたき)への復讐に失敗した王女・スカーレットは、死者の国で目を覚ます。ここは、人々が略奪と暴力に明け暮れ、力のない者や傷ついた者は<虚無>となり、その存在が消えてしまうという狂気の世界。敵である、父を殺して王位を奪った叔父・クローディアスもまたこの世界に居ることを知り、スカーレットは改めて復讐を強く胸に誓う。
そんな中彼女は、現代の日本からやってきた看護師・聖と出会う。時を超えて出会った二人は、最初は衝突しながらも、死者の国を共に旅することに。戦うことでしか生きられないスカーレットと、戦うことを望まない聖。ふたりは……。(英題 Scarlet /2025年/日本映画/113分)
キャスト 芦田愛菜
岡田将生
⼭路和弘 柄本時⽣ ⻘⽊崇⾼ 染⾕将太 ⽩⼭乃愛 / ⽩⽯加代⼦
吉田鋼太郎 / 斉藤由貴 / 松重 豊
市村正親
役所広司
スタッフ
原作・脚本・監督:細田 守
作画監督:山下高明
キャラクターデザイン:Jin Kim 上杉忠弘
CGディレクター:堀部 亮 下澤洋平 川村 泰
美術監督:池 信孝 大久保錦一 瀧野 薫
色彩設計:三笠 修 撮影監督:斉藤亜規子
音楽:岩崎太整

映画『果てしなきスカーレット』予告編


©2025 スタジオ地図

映画『果てしなきスカーレット』公式サイトhttps://scarlet-movie.jp/
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細田守監督『果てしなきスカーレット』新たなアニメの可能性を追求!

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