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ジェイク・ギレンホール「葛藤や妥協は世界共通だと思う」

ジェイク・ギレンホール『複製された男』インタビュー

ジェイク・ギレンホール『複製された男』インタビュー[シネママニエラ]映画『複製された男』主演のジェイク・ギレンホールに話を聞いた。映画『灼熱の魂』『プリズナーズ』のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督がメガホンを執り、ポルトガル唯一のノーベル賞作家ジョゼ・サラマーゴの同名小説を映画化。大学で教鞭をとる主人公アダムの身に起きた出来事を描いていく。

――最初に、この企画のどこに魅力を感じたのかお聞かせください。

僕がこの映画に参加したいと思ったのはドゥニ・ヴィルヌーヴ(監督)が大変素晴らしい監督だからだ。そこで実際彼に会って映画の話をしたら、彼の思い描いていた世界は脚本を遥かに超越するものだった。人は成長する過程で多くの妥協をし、自身の何かを手放すことを余儀なくされる。けれど、自分を見失うほど妥協してはいけない。生きていくためには常にそのバランスが必要なんだ。人生を無駄にしないためにも、時には手放さなければいけないものもある、と。こういった葛藤や妥協は世界共通だと思うんだ。何かを欲することや、それに伴う葛藤、その過程で意識下では何が生じ、どのような決断を下すのか。その不可解で奇妙な道程にとても魅了されたんだよ。

――本作の主人公アダムとドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の共通点はありますか?

突き詰めれば、この話はドゥニ監督の夢想そのものだ。彼が創造した世界で、彼そのものと言える。ドゥニとアダムが共存するその世界の中を、アダムは語り手として彷徨っているんだ。苦悩は誰にでもあるようなことだと思う。他の人と比べて彼が異質だというわけじゃない。色んな意味で彼は夢の中を彷徨っているんだと思う。

――アダムとアンソニーという一人二役の演じ分けで心掛けたことは?

映画では、二人の外見にはあまり差をつけず、態度や行動でそれとわかるように心掛けた。見ればわかるけれど二人は別々の人間なんだ。でも“同じ動力源”で動いていると僕は理解しているよ。この物語は幾通りもの描き方があると思うんだけれど、最も困難で、かつ最も興味深い方法は二人をなるべく似せることだと思うんだ。肉体的な観点や、虚栄心を捨て去ることが大切で、出来ればこの映画の観客には、僕らが住む世界は、形而上学的なものなんだと伝えたい。

映画『複製された男』は、2014年7月18日よりTOHOシネマズ シャンテほかロードショー

R15+
2013年/カナダ・スペイン合作/90分
原題=ENEMY
日本公開=2014年7月18日
配給=クロックワークス、アルバトロス・フィルム
公式サイト http://fukusei-movie.com/
© 2013 RHOMBUS MEDIA (ENEMY) INC. / ROXBURY PICTURES S.L. / 9232-2437 QUEBEC INC. / MECANISMO FILMS, S.L. / ROXBURY ENEMY S.L. ALL RIGHTS RESERVED.

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――観客の困惑を誘う手法ですよね?

僕らは白と黒や、陰と陽みたいに分かり易いストーリーには慣れているし、コンセプトも理解出来る。この映画を不穏に感じるのはハッキリと明暗が分かれていないからだと思うよ。今までの対立の概念を破壊してしまうくらい、観客を困惑させることが出来たら面白いね。
悲観的なことを言うつもりはないけど、死を避ける事は出来なくても僕らは生きなければいけないんだ。僕にとってこの二人のキャラクターは、まさにそうで同じ問題に対して違う悩み方をしているだけで、一方が生き残るためにはもう一方が全てを投げ出し諦めなければならない。その選択に対する答えを描いたのがこの映画なんだ。

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――複製された男を演じた経験はいかがでしたか?

世の中で他の人がやっている仕事を考えると、僕の仕事は少し下らないと思えるとこもあるから、なるべく「疲れた」なんて言いたくないんだけど、考えを整理する点からいうと、数分、時には数秒の間隔で心理状態を繰り返し切り替えないといけないとなると、さすがにちょっと疲れるよね。でも役者として、どう言ったらいいかな…、自分の演技を相手役の目線から見る事が出来るのは面白い経験だったよ。普通は自分の演技が相手にどのような影響を及ぼすか、自分では分からないからね。相手にどんな影響を与えるか考えることはあっても、それを実際に体験することはまずないからね。この映画の場合、特殊な撮影方法のおかげでそれを体験することが出来たよ。

――相手役の女優陣について

この映画の凄いところはとても個性的な3人の女性の存在と、それを見事に演じた女優がいるという点だね。イザベラ・ロッセリーニの場合は一つのシーンを一日で撮ったわけだし、メラニー(・ロラン)とは役作りなどに対して話し合ったけれど、サラ(・ガドン)に関しては凄い存在感と高潔さ、そして誠実であるための必死さとでも言うべきものがあった。それと彼女とは演技に対する姿勢や取り組み方に対して似たような考えがあることにも気がついたんだ。この映画は色んなことに対する発見そのものだから、そのプロセスが面白かった。ドゥニ監督の映画への解釈を考慮すると、各シーンで求められているパートナー、特にサラが演じるヘレンの役には、ただ入ってきて空間を埋めるだけではなく、答えを導き出すことが求められているんだ。彼女との共演は最高にいい経験だったよ。

R15+
日本公開=2014年7月18日
配給=クロックワークス、アルバトロス・フィルム
© 2013 RHOMBUS MEDIA (ENEMY) INC. / ROXBURY PICTURES S.L. / 9232-2437 QUEBEC INC. / MECANISMO FILMS, S.L. / ROXBURY ENEMY S.L. ALL RIGHTS RESERVED.

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――蜘蛛が主人公の深層心理を象徴しているものだとして受け止めましたが。

蜘蛛が映画の雰囲気を作り出していると思う。冒頭からトロントの街を覆う大きな蜘蛛が現れて、この先何が待ち受けているか観客には知りようがないよね。映画のトーンを決定付ける重要な要素だよ。観る者は“この世界では何でもあり得るんだ。この先何が起きても、何が潜んでいてもおかしくないし、理解を超えたものかもしれない”と思わされるんだ。

人間の恐怖心に働きかける効果もあると思う。多くの映画の中で恐怖の対象として描かれるのは、追ってくる“何か”とか、ゴジラのような怪獣だけど、僕らはその恐怖の対象に対して決して動機を聞こうとはしない。大作アクション映画でも同じだよ。単純に迫ってくるという事実が恐怖なんだ。蜘蛛は多くの人が恐怖を抱く対象だけれど、あの蜘蛛はある大きな“?”としての存在だと思うんだ。あの蜘蛛は何かしら自分の中にある真実とか、向き合うべきもの、そういったものを表している気がする。

解釈は何通りもあると思うよ。もちろんアート作品などでも一般的な、母親像であるという解釈も出来るけど、この映画の場合はもっとこう…、僕らが恐れている、常にそばでうごめいてる真実のようなものに思えるんだ。でも実際に蜘蛛が及ぼす危険と蜘蛛のイメージが与える恐怖心を比べると、恐怖心の方が遥かに増長されているよね。確かに怖いし、実際に噛まれて命を落とす人もいるけど、本当の蜘蛛の存在よりもイメージで膨らんだ恐怖心の方が強い。頭の中で強大な何かとして作り上げてしまっているんだ。長くなったけど、映画の中の蜘蛛はそういったことかな。単純にクールなイメージでもあるしね。

R15+
日本公開=2014年7月18日
配給=クロックワークス、アルバトロス・フィルム
© 2013 RHOMBUS MEDIA (ENEMY) INC. / ROXBURY PICTURES S.L. / 9232-2437 QUEBEC INC. / MECANISMO FILMS, S.L. / ROXBURY ENEMY S.L. ALL RIGHTS RESERVED.

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