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94歳アイリス・アプフェルの知恵「自分自身を知り、良き友をもてば幸せに生きられる」

[シネママニエラ]94歳のアイリス・アプフェル( IRIS APFEL )はインテリアデザイナーとして活躍し美術館やホワイトハウスの内装を任され、ジャクリーン・ケネディを顧客に持つというキャリアの持ち主。アイリス・アプフェルさんにお話しを伺いました。

映画『アイリス・アプフェル!94歳のニューヨーカー』(アルバート・メイズルス監督) ©IRIS APFEL FILM, LLC.

この映画『アイリス・アプフェル!94歳のニューヨーカー』はニューヨーク・パークアベニューの自宅で、ハイブランドのジャケットに、ヴィンテージアクセサリーや民族衣装を合わせ、即興でコーディネイトを披露する、アイリス・アプフェル。1950年代からインテリアデザイナーとして活躍、美術館やホワイトハウスの内装を任され、ジャクリーン・ケネディを顧客に持つというキャリアの持ち主。アイリスの”成功の秘訣”に迫るべく、展覧会や老舗百貨店でのディスプレイ企画、売り切れ続出のテレビショッピングなどの舞台裏に潜入していくもの。「ルールは破る」など現代のおばあちゃんの知恵は刺激的!

ホワイトハウス建造当時のオリジナルを忠実に再現していく

「私が(本作の監督)アルバート・メイズルス氏からの映画化の申し出を断り続けた理由は、軽薄なファッショニスタとして取上げられたくなかったし、メイズルス氏とは顔見知りではなかったから。

でも、彼が再三にわたって電話をしてくるので、友人のリンダ・ファーゴ(バーグドルフグッドマンのファッション・オフィスのシニア・ヴァイス・プレジデントでウィメンズ・ファッションのディレクター)に話をしたら、彼女に『断るなんてとんでもない話! メイズルス氏が撮影するといえば誰もがイエスと言うほどの人よ』とたしなめられたのよ。でも、その時点ではすでに断ってしまっていたし、どうしようか?と悶々としていた時に、また彼から電話があったの。

それで『私のスタジオで会って欲しい』と言われて、ハーレムにある彼のオフィスまで会いに行ったわ。そこで彼と彼の撮影スタッフに会ったのだけど、撮影スタッフもとても気持ちの良い人たちだったので、出ることに決めたの。付き合いが長いというだけで友人になるとは限らないわ。会った瞬間に分かり合える人っているでしょう? 友人とはそういうものだと思う。

撮影では、彼が用意したスクリプトも何もなくて、私から提案したアウトラインだけで始まったの。撮影の時、彼はいつも『あなたが何か興味のあることは? 何かやりたいことがある?』と聞いてきて、その時に私がこれこれがしたいとか、その時興味のあることを彼に言って撮影していくというスタイルだったのよ。

この映画の撮影には4年かかったの。お互いに時間が会わなかったり、彼が病気で入院したり、私が手術をしたりしたから。すごく沢山撮影したけれど編集でかなり短くなってしまって。この映画の部分の他にも、まだまだたくさん撮影した素材があるのできっと第2弾もできるわ。

そうそう「ホワイトハウスの内装」に関しては、誤解している部分があるので説明しますね。私は内装をデザインしたのではなく、ホワイトハウスの内装の修復に携わったのよ。ホワイトハウスにはホワイトハウスの外観も内観も建造当時のままを維持する歴史保存委員会があって、私の作業は、その委員会の要望に従って建造当時のオリジナルを忠実に再現していくこと。私がホワイトハウスの修復の仕事を受けた理由は、昔の家や建造物が好きだし、ホワイトハウスの仕事はプレステージが高いし、それに、いつも同じ事ばかりするのは好きじゃないからよ。

その修復には、たとえばカーテンや椅子などの生地は、私たちの会社「 Old World Weavers 」でオリジナルに忠実に製作し直して使用して、主に生地の修復を行ったの。それぞれの大統領夫人たちは、自分たちの趣味ではない、とかむちゃくちゃなことを言ってきたり、自分の趣味を押し通そうとしたけれど、ほとんどの夫人は、良い趣味の持ち主じゃないし、ホワイトハウスのインテリアは彼女たちにはどうすることもできないのよ」

アイリス・アプフェル「人の人生には酷いことが必ず起こる」インタビューつづき

彼女自身の転機ともなったメトロポリタン美術館での展示会の経緯について明かされるシーンの本編映像はこちら

映画『アイリス・アプフェル!94歳のニューヨーカー』特別映像


©IRIS APFEL FILM, LLC.

映画『アイリス・アプフェル!94歳のニューヨーカー』(KADOKAWA配給)は2016年3月5日[土]より角川シネマ有楽町ほかにて全国公開

公式サイト irisapfel-movie.jp
アイリス・アプフェル「ホワイトハウス建造当時のオリジナルを忠実に再現していく」
彼女自身の転機ともなったメトロポリタン美術館での展示会の経緯について明かされるシーンの本編映像はこちら
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IRIS APFEL|アイリス・アプフェル

アイリス・バレル・アプフェルは1921年8月29日、クイーンズのアストリアで、弁護士でファッション・ブティックオーナーの母セイディ・バレルと、輸入業者の父サミュエル・バレルの間に生まれた。子どもの頃から、アイリスは様々なことを独特なスタイルで繰り返すことに情熱を傾けた。父の仕事について行き、エルシー・ド・ウルフの伝説的なインテリアデザインスタジオで、彼女の母性的スタイルのショーウィンドウの陳列を手伝った。ニューヨーク大学で美術を学んだ後、「Women’s Wear Daily」誌で初めて正規の仕事をし、やがてインテリア・デザイナーのエリナー・ジョンソンに師事した後、自身のインテリアデザイン業を始める。


人の人生には酷いことが必ず起こる

ポートレートは巨匠ブルース・ウェバーの撮り下ろし
©IRIS APFEL FILM, LLC.

「昔はカール(2015年100歳で亡くなったご主人)と一緒に、毎年6月から9月までの3か月間、船で旅行していたの、飛行機は嫌いだったから。日本には行く機会がなかったけれど。

私が好きな場所は中近東や北アフリカ。アメリカでもヨーロッパでもないカラフルでエスニックな雰囲気を満喫できるところが好きなの。私はフリーマーケット・フリークだから中東やモロッコの市場はもちろんのこと、パリやヨーロッパのフリーマーケットも大好き。

年々、掘り出し物はなくなってしまっているけれど、それでも市場は大好きよ。ここパーム・ビーチでもフリーマーケットには良く出かけるのよ。何かを買う時の決め手は、“I love or not love” (意訳:ときめくかときめかないか)で、物を買うときも人目ぼれ。何でもあれこれ迷うのは大嫌い。ただお金が足りるかしら? と思うことあるけれど。即決できない人と買い物に行くのは本当に苦痛だわ。

アイリス・アプフェル
©IRIS APFEL FILM, LLC.

それに、私はいつも何かしていないとダメなの。魚のヒレみたいに。一日中、居間に座って何もしない事ほど辛いことはないわ。このクリスマスはカールが亡くなって初めて一人でクリスマスを過ごしたのだけど、本当に憐れだったわ。仕事は辛いこともあるけれど、ハードワークであればあるほど私は楽しくハッピーになれる。私にとってハードワークは全ての良薬ね。人がリタイアを考えるというのは誤りだと思うわ。

人が幸せに生きるためには、Know who you are=自分自身を知ること。良き友をもつこと。自分の好きなことをすることができることが必要だと思うわ。自分の嫌いな仕事をしなければならないのは悲しいことよね。私は幸い私の好きなことをやってくることが出来た。それに、とても素晴らしい結婚生活を送ることができたわ。

でも、いつもハッピーだと何がハッピーだか分からなくなるから、時には悲しい事も必要ね。そうするとハッピーということはどういうことか分かるから。人の人生には酷いことが必ず起こるもの。家族を亡くしたり、友人を亡くしたり、仕事を無くしたり。私にとって主人を亡くした事はとても辛いこと。仕事をすることは私にとって、その辛さを乗り越えることでもあるの。だから働き続けるの。

そして、何事もすべてチャレンジだと思っているの。何でも、いつでも全てが私にとってチャレンジ。チャレンジするのが大好きよ。私は計画を立てて物事を進めたりしないの。私がやりたいと思ったことを提案すると「やりなさい」と言ってくれる人たちが出てきて、それの繰り返しでやってきたから。94歳になった今でも、いろいろな仕事のお声をかけてくれる人たちがいる。そのことを本当に感謝しているわ」

2005年、メトロポリタン美術館が彼女の所有するコスチューム・ジュエリーのコレクションの展示を打診。 膨大なクチュール・コレクションの集大成を展示した「 Rara Avis: Selections from the Iris Apfel Collection 」は評判を呼び全米各地のミュージアムで展示が行われ、アイリスは自らを『80代の新人』と称した。

映画『アイリス・アプフェル!94歳のニューヨーカー』(KADOKAWA配給)は2016年3月5日[土]より角川シネマ有楽町ほかにて全国公開

映画『アイリス・アプフェル!94歳のニューヨーカー』特別映像


©IRIS APFEL FILM, LLC.

アイリス・アプフェル「ホワイトハウス建造当時のオリジナルを忠実に再現していく」
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