コーエン兄弟「誰かに悪いことが起きるのがコメディの常套手段」


映画『シリアスマン』コーエン兄弟インタビュー
©2009 Focus Features LLC. All Rights Reserved.

[シネママニエラ]あのラリー・キングが「コーエン兄弟の最高傑作!」と思わずツイートしてしまったという映画『シリアスマン』。同作はユダヤ人の大学教授ラリー・ゴプニック=“世界一不幸な男”の2週間をたどる物語。監督したのは、ジョエル・コーエンとイーサン・コーエンの兄弟で、「コーエン兄弟」と記され、本年度のアカデミー賞でも最新作の『トゥルー・グリット』が10部門でノミネートされたばかり。

彼らは、1984年の犯罪映画『ブラッド・シンプル』で鮮烈デビューを飾り、その後は無尽蔵にあふれ出る奇想と魔法のごとき演出力で、一作ごとに世界中を魅了してきた。そして、2007年の『ノーカントリー』でアカデミー賞の作品賞、監督賞、脚色賞に輝き、名実共にアメリカ映画界の頂点に立った。そんな彼らが出自のユダヤコミュニティーを舞台にした作品を語った。

イーサン・コーエン監督「脚本に書き方の作法はないし、本作は自伝とは思っていない」

「『シリアスマン』で、舞台を1967年にしたのは僕らにとって重要だったんだ。厳密に言えば、何が決め手となったか、よくわからないんだよ。たぶん、ジェファーソン・エアプレインの歌かもしれない。アルバム「シュールリアリスティック・ピロー」が出たのが1967年の春だった。それが影響したかどうかはわらからないけど、参考にはなったね。それに、最初、僕らは第三次中東戦争(6日戦争)に関連した作品を作ろうとしていて、それが勃発したのはその年の6月だった。結局、それはあきらめたんだ」

「取り組み始めたときには、大人の視点と子供の視点がもっと等分に分かれていたと思うんだけど、脚本を書いているうちに、大人の方に引き寄せられていったんだ。だからこそ、僕らはこの作品を自伝的なものだとは思っていない。舞台となっているのは確かに僕らが育った場所だけどね。僕らの脚本には書き方の作法がない。だから『シリアスマン』は、ちょっとオタクっぽい小市民についての究極のジョークのようなものさ。より面白いストーリーにするには、良いことより、悪いことが起きるほうがいい。悪いことだと、別のことにつながるし、ダイナミックなストーリーになるんだ。僕らは、そのことを愉しんでいるんだよ」

ジョエル・コーエン監督「誰かに悪いことが起きるというのがコメディの常套手段」

「時代という要素は、ある意味ではこの映画を概念化することの一助となったわけだ。この映画のオープニングに民話があるようにね。僕らはミネソタで育ち、ヘブライ学校に通い、バー・ミツバーの儀式をし、同じようなコミュニティーのなかで暮らし、父親は大学の教師だったから、ミッドウェスタンの感性に特徴づけられている。でも、劇中の登場人物ラリーとダニー親子に起きたことは、すべてフィクションだよ。例えば、授業中に音楽を聞いたシーンはあるけど、現実の僕らはしていない。でも、映画を作る過程で、自分が何者かということが影響することは確かなことだ」

「月に猿を送ることの映画だったとしてもね。誰かに悪いことが起きるというのがコメディの常套手段だ、他人の不幸は滑稽だから。今回は舞台俳優を主演に起用したし、僕らはスター級のギャラを取らない俳優を使って映画を作ってきた。それは、予算に支配されないためでもある。映画『バーン・アフター・リーディング』で組んだブラッド・ピットにしても、フィルムメイカーとして演出にはほとんど違いはないんだ。ちなみに『シリアスマン』の脚本は『ノーカントリー』の前に書きあげていて、アカデミー受賞前には融資されていたんだよ」

原題=A SERIOUS MAN
日本公開=2011年2月26日
配給=フェイス・トゥ・フェイス
公式サイト
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