町山智浩

映画評論家の町山智浩、成績アップの秘訣を明かす

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映画『ヤバい経済学』劇場トークショーが6月9日、新宿武蔵野館で行われ、映画評論家でコラムニストの町山智浩が登壇。同氏は『ヤバい経済学』を日本に広めた立役者。

以下、町山氏のコメント。
※オフィシャル素材を一部可変し掲載しています

最初に映画を観たときは、原作そのまんまだな、と思いました(笑)。相撲は取材が入ってましたけど。ラジオで八百長を告白しようとした人が謎の死を遂げてるって言った後、ちょっとヤバくなって公開できるの?って感じになったんですよ。そもそも相撲は神聖な儀式とスポーツが合わさった特殊なものなんです。横綱が負けるってことは国難と結びついちゃう。ヒーローが負けるって許されないことですから、本来八百長であるべきものなんですよね。スポーツじゃない。だから今回、八百長があったってみんな怒ってるけど、怒ること自体おかしいんじゃないかなって。

「フリコノミクス(原題)」って本はレヴィットさんとダブナーさんが書いたものですけど、名前の研究とインセンティブの研究は、実は映画にも出てきたローランド・フライヤーっていうハーバード大学の教授がやっている研究なんですよ。彼は黒人で貧しい環境だったにも関わらず26歳くらいでハーバードの教授になってちょっとしたヒーローだったんです。

名前の差別問題は“プレシャス”って名前が典型的な例ですね。『プレシャス』ってタイトルの映画もありましたけど。大切、かわいいって名前つけといて親が「このバカ娘!」って虐待するわけです。日本でも同じで、水商売に見える名前付けたら親失格ですよね(笑)

フライヤー教授の人生ってテレビでドキュメンタリー番組にもなってましたが、すさまじいんですよ。産まれてすぐ母親が行方不明で、父親はレイプ犯として捕まっちゃう。フライヤー君は13歳のときに自分の出生証明書を偽造してマクドナルドで働くんですね。マクドナルドで働いてもしょうがないと思うんですけど、目的はレジから金を盗むことだったんです。盗んだ金で車を買って車でテキサスからラスベガスのギャンブルに行ってマリファナを買ってきてそれをテキサスで2倍3倍で売るっていう商売を始めるんです。そのお金で父親の保釈金払っちゃう。

彼の従兄弟はクラックっていうコカインをフライパンの上でベーキングパウダーと水を混ぜて、熱を加えて乾燥させたものを作ってたんです。覚えといたほうがいいですよ(笑)。クラック作ったフライパンで子供にホットケーキ作ってあげてたりしてたんですね。で、その従兄弟一家が警察に捕まっちゃって、友達も強盗で捕まっちゃったりして、もう八方塞がりになっちゃったんです。でも彼は体格がよかったからフットボール選手として奨学金で大学に行ったんです。そんな人生だったから、彼は「どうして貧しい黒人ってだけでこんなことになっちゃったんだろう?」と考えたんですよね。

そのときに経済学と会って、インセンティブという概念とぶつかって論文を書いて、それがハーバードに認められたんです。彼がまだ26歳くらいの時に。彼をハーバードの教授にしようって決めたのがラリー・サマーズって、映画『ソーシャル・ネットワーク』に出てきた嫌な学長なんですよ。ちなみにサマーズは「科学の分野で女が成功しないのは女がバカだからだ」って言っちゃってクビになっちゃったんですね。

フライヤー教授は勉強するっていうインセンティブが数値化できると自分のような環境に育つ人でも勉強ができるようになるはずだ、と考えたんですね。高校生にお金を渡して成績をあげようっていう実験はアメリカでは大変な問題になりました。「お金をあげるから成績をあげろ」って言っても成績、あがらないんですよね。なぜなら成績のあげ方がわからないから。例えば「本を読め」「授業中手をあげろ」って言うとできるんですよね。具体的に言わないとダメ。

どうすると一番成績が上がるのかというと「必ず1回先生に質問をしろ」って言うんです。質問をするためには自分は何がわかってないかを調べなきゃいけないから。日本でも生徒が質問をするように引っ張るような授業ってできてませんよね。たいてい先生が答えを教えてそれを生徒に覚えさせるっていう授業ですから。そんな授業じゃ勉強できるようにはならない。そういった研究をTime紙で発表してます。

原題=FREAKONOMICS
日本公開=2011年5月28日
配給=アンプラグド
公式サイト
©2010 Freakonomics Movie ,LLC

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