氷川竜介氏と原恵一監督、監督はエスパー魔美ポーズでニッコリ

原恵一監督「エスパー魔美」の魅力を語る

映画会見/イベントレポート

原 恵一監督が10月29日、第30回東京国際映画祭の特集上映「映画監督 原恵一の世界」でトークショウを行った。この日は台風22号が接近中で上映前は暴風雨だった。トークショウが行われたのは上映後で「魔美の超能力が効いたのか、雨は上がっています」という、東京国際映画祭プログラミング・アドバイサーでありアニメ・特撮研究家の氷川竜介氏の司会で進行。今回上映されたのは、原監督が初めてチーフディレクターを務めたテレビアニメシリーズ「エスパー魔美」(全119話+SP1話)の第54話「たんぽぽのコーヒー」と、第96話「俺たちのTONBI」、映画監督デビュー作 『エスパー魔美 星空のダンシングドール』(1988)の3作品。

原恵一監督「エスパー魔美」の魅力を語る
氷川竜介氏と原恵一監督、監督はエスパー魔美ポーズでニッコリ
© 2017 TIFF

2年7か月続いたテレビシリーズより原監督自ら、この2話をチョイス。なぜこの2作品なのかを問われると、「(毎週放送を続けるうちに)原作のエピソードが無くなっていき、オリジナルストーリーを作らなければいけなくなったときに、藤子・F・不二雄先生の原作の素晴らしさを痛感し、先生のセンスを思い知らされた」と言う。

それは、ほかの藤子作品(ドラえもんなどのキャラクターもの)と違い、エスパー魔美はストーリー性がしっかりしていることも影響していた。

「先生はものすごい勉強家で、その頭から思い浮かぶストーリーは、僕たち凡人とはレヴェルが違う。今日観ていただいた2本は、オリジナル作品の中でも、藤子先生の作品に並べても恥ずかしくないし、思い入れのある作品です。(「たんぽぽのコーヒー」は)同期入社の桶谷 顕くんが書いた脚本です。彼は元々脚本家になりたかった人で、彼が書いた「たんぽぽのコーヒー」のプロットがとても共感できて、面白かった。藤子先生が書いたと言っても不思議じゃないような物語で、僕自身もすごくノレて絵コンテを描けました。彼の書いた作品の中で一番思い入れがあります。(「俺たちTONBI」は)若者たちの群像劇を作りたかった。エスパー魔美というコンテンツの中で、初めて脚本を担当した作品で思い入れがあります。どちらもいい作品ができたという自負のある作品です」

放送当時、テレビアニメ「ドラえもん」の演出を担当していた原監督は、20代という若さで「エスパー魔美」のチーフディレクターへ異例の抜擢。「パイロット版の絵コンテを描いたのが僕が勝手に師匠と思っている芝山 努さんで、演出スタッフとして参加したいと手を挙げたら、プロデューサーに呼ばれ、“チーフディレクターをやれ”と言われた。エスパー魔美はドラえもんとは違う、藤子・F・不二雄作品の中でも子供向けでなく、挑戦的なタイトルだったので、若い人にやらせてみようということだったと思う」

ものすごく嬉しくて、意気込んで参加したものの、「何をやってもダメ出しされ」「オープニングは何回も作り直した」挙げ句、「オンエアが始まる前に辞めようと思った(笑)」ことも吐露。「頭にきたヤツをぶん殴って、国外逃亡しようかと思ったことも本気であった」と語り、実際、本作終了後に海外へ長期旅行に出掛けている。

第30回東京国際映画祭の特集上映「映画監督 原恵一の世界」トークショウ
トークショウ
© 2017 TIFF

「佐倉魔美という、中学2年生の女の子の日常を描きたかった」と語る原監督に対し、“超能力を持つ少女”にスポットをあてた派手さを求め、「もっと華やかにできないの?」という上の意向、スタッフと衝突することも多かったそうだ。だが、オンエア後、この方向でいいのではないか、という流れになり、『映画ドラえもん のび太のパラレル西遊記』の併映作として、自身初映画監督作『エスパー魔美 星空のダンシングドール』を作ることになる。

「のめり込みすぎて子供の観客を一切考えず、マジメなドラマとして作ってしまった。公開時に映画館に観に行き、(ドラえもん目当てで劇場に来た子供たちが)退屈して館内を走り回っているの見て、なるほど! 子供は我慢しないんだな、ということを知りました(笑)」

原監督がもっとも尊敬する脚本家は山田太一だそうで、当初、エスパー魔美の脚本家に誰を起用したいかと聞かれ、山田太一の名を挙げるが、すぐに却下されたそうだ。「山田さんの書くドラマは、日常生活の描写が非常に丹念。直接的でない、何気ない会話から、深い話題に入っていくのが好き。分かりやすい構成には興味がなかったですね」

写真撮影では、魔美がエスパー能力を使うときにする手のポーズを再現するなどサービス精神旺盛。会場には、オープニングテーマ「テレポーテーション -恋の未確認-」など「エスパー魔美」の主題歌を歌う橋本 潮も来場しており、原監督からも「主題歌大好きでーす!」と手を振る姿がみられ、会場を湧かせた。

そして、最後にこう締めくくった。
「藤子・F・不二雄先生の作品の中でも『エスパー魔美』は代表作のひとつ。オンエアできなかった原作もあるので、読んだことのない人は是非読んでいただき、どんなに素晴らしい作品だったか、藤子先生がどんなに挑戦的で素晴らしい作家であったかを知ってもらいたい。その先に、アニメーションやほかの作品も観てもらいたいです」
なお、全集の1巻には原監督のコメントも収録されている。(藤沢ともこ)

第30回東京国際映画祭アニメーション特集「映画監督 原恵一の世界」メインビジュアル
「映画監督 原恵一の世界」メインビジュアル
© 2017 TIFF

写真は追って掲載します。→掲載しました

第30回東京国際映画祭の開催は2017年10月25日[水]~11月3日[金・祝]

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