スティーブン・ノムラ・シブル/Stephen Nomura Schible監督と坂本龍一

マエストロ坂本龍一「生と死に向き合ってきた」実録映画『Ryuichi Sakamoto: CODA』お披露目

ニュース ヴェネツィア国際映画祭

マエストロの坂本龍一が、第74回ヴェネツィア国際映画祭アウト・オブ・コンペティション部門に公式出品作『Ryuichi Sakamoto: CODA』が9月3日(現地時間)、ワールドプレミア上映に合わせて現地入りし、同作のスティーブン・ノムラ・シブル監督と記者会見と上映会場に来場した。その現地レポートを掲載する。

坂本龍一さん ©KAZUKO WAKAYAMA

坂本にとって同映画祭は2013年にコンペティション部門の審査員として参加したゆかりの深い映画祭で、今度は出演者としての参加となった。12時30分(現地時間)からの記者会見では、本作が、音楽家としてだけではなく東日本大震災後の坂本の活動にクローズアップされていることにちなんで震災に関する質問が相次ぎました。シブル監督は、「東京で生まれ育った自分にとっても震災はとても大きな出来事でしたが、坂本さんの震災以降の活動の変化について興味を駆られて、映画を撮らせてほしいとアプローチをしたものの、そのオファーにまさか坂本さんからいい返事をもらえるとは思ってもみませんでした」と話す。

坂本も、「震災は自分自身にとって大きな出来事でした。震災以前の1992年頃から環境問題に対して懸念は持っていて、自分にできることを取り組もうとしてきたけれど、自分はこれまで自然が発する声というものに充分に耳を傾けてこなかったのではないかと思ったんです。震災以降、すべての瞬間でそれに耳を傾けようと努力していますが、そのことは自分の最新アルバムだけでなくこの映画にも投影されています」と語った。会見後、坂本は海外プレスから「(西洋音楽における芸術家、専門家、巨匠などに対する敬称)マエストロ!」の掛け声が飛び交う中サイン&写真攻めにあい、時間が押しているからとスタッフが促すにも関わらずひとりひとり丁寧にサインに応じ、世界の映画人からの人気の高さも伺えた。

上映は、14時30分(現地時間)より1000席を誇るメイン会場SALA GRANDEにて行われ、エンドロールが始まるやいなや超満員の観客から5分以上に渡って熱狂的なスタンディングオベーションが続く中、坂本は満足気な表情で何度も手を上げて応えた。CODAとは一つの楽曲や各楽章の終わりに、終結の効果を強めるためにつけ加える音楽用語。特性として、変調やキーの変化を示すことが多い。

2014年に中咽頭ガンが発覚した後のことについて、監督はそれによりこの映画の制作プランの変更を余儀なくされたことを明かした。坂本は、「震災や病気の前からも生と死には向き合ってきましたが、病気をきっかけにそれがよりリアルで身近なものになりました。監督はある意味運がよかったと思います。(病気が発覚したことで)この映画にドラマチックな要素が加わりましたから(笑)」とジョークを交えつつ回答。その他、劇中でも触れられる多く手掛けてきた映画音楽におけるアプローチやそれに対する想いについてなどたっぷり語っていた。

映画『Ryuichi Sakamoto: CODA』あらすじ

本作は、2012年から5年間に渡る本人への密着取材と膨大なアーカイブ素材によって構成。
(2017年/アメリカ・日本/カラー/DCP/American Vista/5.1ch/102分)

映画『Ryuichi Sakamoto: CODA』予告編

©2017 SKMTDOC, LLC

坂本龍一 プロフィル

1952年、東京生まれ。東京芸術大学大学院修士課程修了。1978年『千のナイフ』でソロデビュー。同年、細野晴臣、高橋幸宏と『YMO』を結成。散開後も、音楽・映画・出版・広告などメディアを越え活動。1984年、自ら出演し音楽を担当した『戦場のメリークリスマス』で英国アカデミー賞ほかを、映画『ラストエンペラー』の音楽で米アカデミー賞、グラミー賞ほか受賞。以後、活動の中心は欧米へ。常に革新的なサウンドを追求する姿勢は世界的評価を得ている。1999年制作のオペラ『LIFE』以降、環境・平和問題に言及することも多く、アメリカ同時多発テロ事件をきっかけとした論考集『非戦』を監修。自然エネルギー利用促進を提唱するアーティストの団体artists’powerを創始するなど、活動は多岐にわたっている。2006年には新たな音楽コミュニティー「commmons」をエイベックスとともに設立。また、2007年一般社団法人「more trees」を設立し森林保全と植林活動を行なうなど90年代後半より環境問題などへ積極的に関わる。東日本大震災後、『www.kizunaworld.com』、『こどもの音楽再生基金(http://www.schoolmusicrevival.org)』、『東北ユースオーケストラ(http://tohoku-youth-orchestra.org/)』など、さまざまな被災者支援プロジェクトに関わるとともに、脱原発を訴える活動をおこなっている。主な作品に『B-2 UNIT』『音楽図鑑』『BEAUTY』『LIFE』『out of noise』、著書に『音楽は自由にする』、共著に『縄文生地巡礼』、『いまだから読みたい本3.11後の日本』、『NO NUKES 2012 ぼくらの未来ガイドブック』など。1990年より米国、ニューヨーク州在住。

スティーブン・ノムラ・シブル[Stephen Nomura Schible] プロフィル

1970年、東京生まれ。日本人の母親とアメリカ人の父親の元で育つ。18歳でニューヨークに移住しニューヨーク大学で映画製作を学ぶ。在学中に、原一男監督のアシスタント・ディレクターを務める。90年代後半、プロデューサー代理として、青山真治監督『EUREKA ユリイカ』、河瀬直美監督『火垂』などの海外窓口・国際マーケティングを担当。マルグリット・デュラス原作『二十四時間の情事』のリメイクで諏訪敦彦監督『H story』にも参加。ソフィア・コッポラ監督『ロスト・イン・トランスレーション』では、共同プロデューサーとして日本サイドの全製作業務を担当。2004年、エリック・クラプトンが敬愛するブルース界のレジェンド、ロバート・ジョンソンへのトリビュートとなった音楽ドキュメンタリー「セッションズ・フォー・ロバート・J」 を監督・製作。以後、広告コンテンツの製作等や映画製作を続けている。ニューヨーク州在住。

映画『Ryuichi Sakamoto: CODA』(KADOKAWA 配給)は2017年11月4日[土]より角川シネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAほかにて全国公開

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