映画『ウッドストックがやってくる!』

アン・リー監督インタビュー/映画『ウッドストックがやってくる!』

映画インタビュー

『ウッドストックがやってくる!』撮影中のアン・リー監督c2009 Focus Features LLC.  All Rights Reserved.[シネママニエラ]全米が、そして世界中の人々が、アポロ11号の月面着陸に夢中になった1969年の夏、永遠に語り継がれるであろうもうひとつの歴史的な出来事がアメリカで実現した。

同年8月15日~17日の3日間に渡って開催されたウッドストック・フェスティバル。名匠アン・リーが、映画『ウッドストックがやってくる!』で、その“奇跡の3日間”への道のりを紡ぎます。『ブロークバック・マウンテン』でアカデミー監督賞に輝いたアン・リー監督が、ウッドストック40周年にあたる2009年に完成させた本作は、この音楽フェスティバルをまったく新しい視点で捉え、開幕前夜の波乱に満ちた秘話を語り明かす青春映画。そこでアン・リー監督に、お話を伺いました。

――最初にこの原作を知ったのは?

アン・リー監督:僕がサンフランシスコのテレビ番組に出たときに、原作者のエリオット・タイバーもゲストで出ていて、待ち時間に本を渡されたんだ。それから数日後、映画学校時代からの友人パット・クーポが電話をしてきて、僕がエリオットから本をもらった話をどこかで聞いたらしくて、「絶対に読めと」言ってきたんだ。

――原作のどの部分に惹かれましたか?

アン・リー監督:正直なところ、著者の家族の物語よりもウッドストックの話の方がインパクトがあった。でもウッドストック自体はとてつもなく壮大で、あまねく捉えることはできないし、ドキュメンタリーの再現をするつもりもなかった。もう古典的な傑作になってしまっているからね。だからそれはないと思った。もし60年代末あるいはウッドストックを描くとしたら、別の場所に碇をおろさなければいけなかった。こうして僕はあの小さなモーテルからの視点に気付いたんだ。そしてウッドストックを自分たちの生活のど真ん中に誘致したことでエリオットや彼の家族が遂げる変化を描くというのが、ウッドストックへのもう一つのアプローチだと思ったんだ。小さいけれど、ウッドストックを感じることができる可能性が見えたよ。こうして家族のドラマを描くことになった。僕はいつも家族のドラマを描いているけど(笑)。それがこの仕事の真髄でもあるわけだから。

――なぜこの本を映画化しようと思ったのでしょうか? この題材を取り上げようと思った理由は? 家族の何に惹かれたのでしょうか?

アン・リー監督:悲劇的な作品を連続して撮り続けてきたから、コメディを探していたんだ、皮肉じゃないコメディをね。それに自由と素直さと寛容さを兼ね備えた物語、そして絶対に忘れることのできない、そして無くしてはいけない“純粋な精神”を備えた物語を探していたというのもあった。家族の問題というのは、きっと解決できない問題だからだろうね。この作品には一応解決策があるけれど、芸術においては、僕らにできることは現象を提示することだけ。僕はずっと自由を求めて衝突する人間に興味を持っていたんだ。ある関係の中に縛られるのはバカらしいことだとは思うけど、でもそうやって自由を手にしても、悲しいよね。そして絆を失う。何度も描きたいと思うのはそういう空気なんだ。それはきっと人間の手管というか、関係性の中心にあるものなんじゃないかな。

――監督ご自身はウッドストックのことを覚えていらっしゃいますか?

アン・リー監督:ニュースで見たことは覚えているよ。髪をふわふわに膨らませた男がギターをかき鳴らして、その周囲は人の海。噛みつきそうな勢いで「ウッドストックがこの国で、ここニューヨークで始まりました」って伝えていた。覚えているのはこれぐらい。でも音楽は話題になっていたよ。ベビー・ブーマーたちは世界の歴史を書き換えようとしていた。だからひとりの大人としてそこから逃れることはできなかったんだ。まだその雰囲気はあたりに漂っているし、年月を経てウッドストックは自由、新しい世代、そしてそのほか多くのものを象徴する伝説的なシンボルとなったんだ。

――この映画は、どの程度史実に忠実に描かれているのでしょう?

アン・リー監督:それは大変な質問だな。答えるのが大変だ。もちろん伝記という側面はある。でも著者のことをどの程度信用したものか…?(笑)。主人公のエリオットは、確かにマイケル・ラングに電話をかけた。でもその部分のリサーチをした時に、ウッドストックの口述歴史を辿って、マイケル・ラング自身とも、ジョエル・ローズマンとも話をしたんだけど、彼らの話はまた少し違っていたんだ。まるで「羅生門」だよ。例えばあの牧草地を見つけたのは誰だったかについては、少なくても4パターンの答えがあったよ。「あの牧草地を見つけたとき、これだって思った。まさに運命だった」って、誰もが言うんだ。みんなあそこの土地、あの円形劇場を見つけた最初の人間なんだよね。だから本当にいい質問だよ。僕は原作バージョンで撮った。僕に言えるのはそれだけだね。ちなみに本作の中でウッドストックは出てこないんだ。面白いことに、ウッドストックはウッドストックで起こったわけではないんだけど、誰も開催されたホワイトレイクやベセルとは言わずに“ウッドストック”って言うんだよね。

原題=Taking Woodstock
日本公開=2011年1月15日
配給=フェイス・トゥ・フェイス
公式サイト
Twitter=http://twitter.com/D_D_Project/
c2009 Focus Features LLC.  All Rights Reserved.

「監督主義プロジェクト」として上映される作品はこちらの3作。

映画ファンを魅了し続ける監督たちにスポットをあてるプロジェクト。「Director’s Driven Project(監督主義プロジェクト)」が、いよいよ始動します。

第一弾 アン・リー監督『ウッドストックがやってくる!』
第二弾 コーエン兄弟監督『シリアスマン』
第三弾 サム・メンデス監督『お家をさがそう』

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