舞台「家庭内失踪」小泉今日子×風間杜夫の倦怠期夫婦ぶり

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M&Oplaysプロデュース「家庭内失踪」
撮影 柴田和彦
[シネママニエラ]劇作家で演出家の岩松了の新作舞台「家庭内失踪」が3月11日、東京・本多劇場にて開幕。その舞台稽古の様子が同日メディアに公開された。

本作は岩松に岸田國士戯曲賞をもたらした傑作「蒲団と達磨」の後日譚ともいえる、ある夫婦を取り巻くミステリアスな、だが妙に笑えもするホームドラマだ。

近年の岩松作品に多数出演し、その世界観を体現してきた風間杜夫と小泉今日子が夫婦役を演じ、ほかに小野ゆり子、落合モトキ、坂本慶介、そして岩松自身の全6名のキャストにより、多層的な人間ドラマが緻密に作り出されていく。

寝室から幕を開けた。夫婦の蒲団が微妙な距離感で、二組並んでいる。先妻の死後、20歳も歳下の後妻・雪子(小泉)を迎えた野村(風間)。自身は定年退職する歳となり、妻相手にコトに及ぼうとするも上手くいかない。野村が身体的、心理的に抱える繋がれなさ、充たされなさが、登場人物各々が迷走するこの物語の通奏低音として響いている。

野村と先妻との間の娘・かすみ(小野)は、夫の石塚との婚姻関係を続けながらも、父と義理の母(=雪子)が暮らす実家に出戻ってきている。夫のもとに帰るよう説得するため、石塚から命を受けた部下・多田(落合)、石塚のクラシック音楽仲間・青木(坂本)も野村家に現れる。もう一人、野村の奇妙な友人の望月(岩松)。彼は、失踪したと妻に思わせて実は近所のアパートを借り、夫の帰りを待つ妻の姿を、ピザ屋や肉体労働者などの扮装などをしながら覗き見るという謎の生活を送っている。かすみは、美しい義母の中に、父に対する軽蔑の感情があることを感じ取っていた。父への親子愛か、はたまた雪子への同性としての嫉妬か、かすみの中に芽生えたかすかな感情が、一家をかき回していく端緒となる。

岩松が書く人物らしく一見淡白にも見える登場人物たちは内面に様々な感情を抱え、目に見えない人物相関図は、物語が進むにつれてどんどん複雑に。そして個々の感情はふと、ドライアイスの煙のように怒涛の勢いで、冷たく漏れ出す。その瞬間に客席で味わえる心のざわめきが岩松作品を観る醍醐味だが、本作ではそれが幾度もやって来る。

「フフ……」という微笑みが印象的な小泉は、「妻」「母」「女」全ての要素をミステリアスに、だが現実的に体現してみせた。ムーディーな小泉とは対照的なのが、言葉数も多く開けっぴろげな風間。そのあっけらかんとして見えるキャラクターに、冒頭で記した“老い”にも絡む複雑な感情を忍ばせる。名優ならではのサラリとした仕事ぶりに圧倒された。

舞台はリビングと和室(兼寝室)のみで、本音と建前を行き交う登場人物の心理がごとく、何度も左右にスライド。そして最後の最後には、装置的な仕掛けが待つ。岩松の掌で、たゆたうようでいて実は緻密に踊らされる快感を、隅々まで堪能していただきたい。(文・武田吏都)

舞台「家庭内失踪」あらすじ

年の離れた高校教師・野村の後妻となった雪子。その彼女ももう40歳を過ぎ、夫は定年退職。二人の間には倦怠の空気が漂っている。ある日、野村の先妻との娘・かすみが訪ねてくる。微妙な3人の関係に娘の夫の部下や近所の男がからみ、事態は思わぬ方向へ転がり始めるのだった。

M&Oplaysプロデュース「家庭内失踪」
東京を皮切りに大阪・名古屋・岐阜・静岡・富山・広島・福岡・新潟・宮城・福島にて公演 
お問合わせ=森崎事務所 TEL 03-6427-9486
公式サイト http://mo-plays.com/kateinai/

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