映画『終の信託』の名カメラマン・寺田緑郎を偲んで…映画『田吾作どんのいる村』舞台挨拶

映画『終の信託』の名カメラマン・寺田緑郎を偲んで…映画『田吾作どんのいる村』舞台挨拶

映画会見/イベントレポート

中編映画『田吾作どんのいる村』の舞台挨拶が6月4日に行われ、猪浦直樹監督、キャストの加藤大輔、若林奈緒子、大西暁美、優希和也、スタッフの淡路俊之、臼井勝が登壇。撮影を振り返り、本作が遺作となった名カメラマン、寺田緑郎を偲んだ。

後列左から)加藤大輔、若林奈緒子、寺田緑郎(写真)、優希和也、臼井勝、淡路俊之
前列左から)大西暁美、猪浦直樹監督
後列左から)加藤大輔、若林奈緒子、寺田緑郎(写真)、優希和也、臼井勝、淡路俊之
前列左から)大西暁美、猪浦直樹監督

本作は、新潟出身の猪浦直樹監督が、製作・原作・脚本・編集を手掛けたファンタジー映画。一年をかけて新潟各地でオールロケを行い、美しくも厳しい自然を背景に、子供のままの少年・田吾作の悲恋を描いた。なお、本作の撮影監督を、周防正行監督の『終の信託』でカメラマンを顕彰する三浦賞に輝き、その後も周防監督の『舞妓はレディ』、広末涼子主演の『はなちゃんのみそ汁』と精力的に活動してきた名カメラマン・寺田緑郎が務めたが、昨春、本作を最後に52歳という若さで亡くなった。そのため、この日は本編上映後に寺田カメラマンの秘蔵映像、写真が上映された。

故・寺田緑郎カメラマンを偲んで

上映後に行われた舞台挨拶では観客からの質問に応じる時間が設けられ、寺田カメラマンの友人から「(寺田カメラマンが)この映画に関わることになった経緯は?」と尋ねられた猪浦監督は、「2000年、私がまだ東京にいる頃に『ロンドンへ行きたい!』という35ミリの短編を作り、寺田さんがチーフの撮影助手を務めてくれました。それから15年が経ち、新潟にUターンしていた私が『寺田さんが新潟に来て、俺(監督)の話をしている』という噂を耳にして撮影現場にお邪魔したところ、喜んでくださって不覚にも『ボランティアで映画撮ってあげるよ』と口を滑らせてしまった」と回想。

さらに、撮影時を振り返って「ガンの手術をされたあとで、『新潟に来ると耳鳴りがなくなるんだよね』とおっしゃっていた。新潟を気に入って、コシヒカリと温泉を満喫し、『これからずっと撮ってあげてもいい』とおっしゃってくださっていたのに……非常に残念です」と悔み、「今日も寺田さんの関係者の方がたくさん来てくださって、亡くなられてからもお世話になっている気持ち」と感謝の気持ちを口にした。

映画『終の信託』の名カメラマン・寺田緑郎を偲んで…映画『田吾作どんのいる村』舞台挨拶
寺田緑郎カメラマンとの思い出を語る猪浦直樹監督

それに対し、寺田カメラマンと所縁の深い淡路氏、臼井氏も「監督には失礼だけど、普通は賞をとると小さい作品はやらなくなる。でも彼は、どんな仕事でも気に入ったものはやるというスタンスで、それがとても素敵でした。もう少し一緒に仕事をしたかった……。この映画の音を消してみると、彼のすごさがわかるんです。すごい画を撮ってますから、皆さん覚えておいてください」(淡路氏)、「監督が見学に来られた現場に(自分も)いて、その後、寺田さんから『手伝ってくれないか?』と電話をもらって今に至っています。監督の人柄のおかげで、寺田さんがカメラマンをし、僕も録音をやることになったのかなと思うと、ありがとうという気持ち」(臼井氏)と、それぞれに故人を偲んでメッセージを送った。

キャストは撮影秘話で温かい雰囲気を

その一方で、キャストは撮影を振り返り、「田吾作は主役なのに、台本をもらったらセリフが2つ。どう演じればいいのか分からないまま春夏が過ぎ、ようやく田吾作になれるようになった気がしたのは秋ぐらいからでした(笑)」と、主演の加藤が笑いを誘えば、若林と優希も「熱にうなされる田吾作を看病するシーンは、15分ぐらい撮ったのに本編ではバッサリ(笑)。でも(私の中では)寺田さんに向き合っていただいて、緊迫した状況の中で(役に)どっぷりつかって撮ることができた印象深いシーンです」(若林)、「私は木を切るシーンだけの出演で、寺田さんから『こうやって腰を入れてやるんだよ』と木の切り方を指導してもらいましたが、翌日は筋肉痛で。35歳ぐらいの設定ですが、50歳過ぎてますから(笑)」(優希)と撮影秘話を次々と披露。

会場が温かい雰囲気に包まれるなか、本作に出演しながら、ナレーションと衣装も担当した大西は「監督から『ロケ地を探しに行くので付き合ってくれないか』と言われて、雪が5メートルほど積もった六日町に行き、スキー客に混じって八海山のロープウェイに乗ったらものすごいガス! そのガスが晴れて、八海山から見下ろす山々と凛とした空気を目の前にしたとき、『ああ、ここには田吾作がどこにでもいるんだな。これを監督は表現したいのかな』と思いました」と監督の思いを慮り、「本当に良い映画になったと思います」と労っていた。(文:小島弥央)

映画『田吾作どんのいる村』は2017年6月3日[土]18:00/20:30、4日[日]13:00/15:30、渋谷ユーロライブにて限定上映
映画『田吾作どんのいる村』公式サイト
公式SNS Twitter | Instagram | 映画『田吾作どんのいる村』facebook

2017年6月7日 更新[本文]

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