横浜流星と吉沢亮

吉沢亮『国宝』は「今までの役者人生の集大成作品」

映画会見/イベントレポート

吉沢亮『国宝』は「今までの役者人生の集大成作品」

俳優の吉沢亮が、主演映画『国宝』について「今までの役者人生の集大成作品」だとして、「撮影期間を含めて1年半、歌舞伎の稽古を続けて役に向き合いました。どの作品も特別で、全力でやっていますが、この作品にかけた時間とエネルギー量は桁違いです。それだけのものを背負って現場に臨みました。確実に、今までの役者人生の集大成です。これまで培ったものをすべてぶつけた作品です」だとその想いを述べた。

横浜流星と吉沢亮
横浜流星と吉沢亮

吉田修一著「国宝」を李相日監督が、吉沢亮主演で映画化した本作は、任侠の一門に生まれながらも、歌舞伎役者の家に引き取られ、芸の道に人生を捧げた主人公・立花喜久雄(花井東一郎)の50年を描いた壮大な一代記。第78回カンヌ国際映画祭「監督週間」部門に選出され、プレミア上映が行われた。原作は、吉田自身が3年間歌舞伎の黒衣を纏い、楽屋に入った経験を血肉にして書き上げた渾身作だ。

喜久雄を演じた吉沢は、「歌舞伎役者は、役者というつながりはありつつも、全く違う世界だと改めて感じました。我々役者は、“人間の人生を演じて生きていきます”。歌舞伎役者さんは、何百年も前の先人たちが積み上げてきた一つの芸を生きていきます。そこへの覚悟は、小さい頃から舞台に立って何十年も積み重ねて、ようやく形にしていくものだと思います。僕がそれを演じるのに、1年半では足元にも及ばないことは分かっていますし、技術的に足りない部分はたくさんあると思います。だからこそ、我々役者がやった意味があると思います。僕は喜久雄を通して、がむしゃらな精神や意地を感じました。そこが観ていただきたいポイントです」とまとめた。

完成作品をすでに2回鑑賞したという。「いろいろな思いがあって、一回だけではすべての思いが処理しきれず、二回観ました。「とにかくすごいものを観た!」という余韻がありました。カメラワークや、皆さんのお芝居、美術、ライティング、総合芸術、それぞれの素晴らしさがありました。本作は歌舞伎がテーマなので、観る前は難しい題材と思う方もいるかもしれませんが、そんなことはありません。『純粋にエンターテインメントとして楽しめる、本当に最高な作品が生まれたなぁ』と思って、ホッとしています」と心情を吐露。

横浜も、吉沢と共に歌舞伎役者・大垣俊介(花井半弥)役に臨んだ。歌舞伎の名門・花井半二郎(渡辺)の息子として、梨園(=歌舞伎界)で喜久雄と共に切磋琢磨していく。
横浜は「俊介という人物は、僕自身とは正反対でむしろ苦手な人間です。なので、普通の役作りとは違って、まず理解し、愛することから始めました。李監督は、映画『流浪の月』の時もそうでしたが、自分の中にきっとあるけれど律して眠らせているものを解放させて、挑戦させてくださるので役者冥利に尽きます。それと同時に力不足も感じましたが、幸せな時間を過ごせました。完成した作品を観て、芸に人生を捧げた彼らの生き様が美しくて、感銘を受けたし励まされました。僕も彼らのような人生を過ごすためには、“芸に励むのみだな”と思いました」と振り返った。

寺島しのぶ
寺島しのぶ

「映画化は無理だ」とされていた本作。半二郎の妻・幸子役の寺島が説明してくれた。二人を部屋で預かってしつけていく役だが、「歌舞伎界は世襲制なので、この役自体はリアルには成り立たないものです。なので、吉田さんの本を読んだ時に「とても夢がある物語だな」と思いました。李さんとは、これまで何度か『ご一緒できるかなぁ?』と思っていたのですがなかなか叶わず、この作品でお会いできました。また、歌舞伎が題材で、ご一緒できることに意味があるのかなと感じました。私は今回、役者というより、スタッフの一部のようでした。例えば、セットで自分が見てきたものと違うと思ったら、監督に『こうじゃないですか?』と言った」こともあったという。既にご存じの通り、寺島は歌舞伎の家系に生まれ育った。

李相日監督『国宝』は「非常に生命力の強い作品」

左から、李相日監督、森七菜、渡辺謙、横浜流星、吉沢亮、高畑充希、寺島しのぶ、見上愛、田中泯
左から、李相日監督、森七菜、渡辺謙、横浜流星、吉沢亮、高畑充希、寺島しのぶ、見上愛、田中泯

メガホンを執った李監督は、本作を「非常に生命力の強い作品」だと語った。寺島の助言については、「結構厳しい指摘でした(笑)! でも、素晴らしい指摘でありがたかったです」と感謝を述べつつ、「『(映画化は)無理だ』というのは同感です。だからこそ百年近く歌舞伎の作品はないわけです。なぜなかったのかは、やってみて分かりました。先ほど、しのぶさんの『歌舞伎界ではありえない』を、まず(原作者の)吉田さんに突破していただいて、次は僕が背負う番だったので、共に背負う仲間を引き入れました越山敬達。僕一人では背負い切れない規模だったので、背負い分け合った感じです。今日はここにいない少年時代の喜久雄(黒川想矢)と俊介(越山敬達)も、まるで歌舞伎をやったことがないところから、「歌舞伎の天才少年現る!」というシルエットを体現するために、同じように努力していました。歌舞伎指導に入っていただいた四代目中村鴈治郎(吾妻千五郎役)さんも常に前のめりでした。関わった皆さんが背負いあっていて、やればできたんだなという気持ちです」とまとめた。

圧倒的な存在感で、当代一の女形で人間国宝・万菊役をつとめた田中。「歌舞伎の話を僕の口からすることは、生まれて初めてですが、密かにずっと言葉と踊りの関わりを思い続けてきました。本作に出演したことが、また僕の新しいスタートラインになると思っています」と謙遜。そして渡辺は、「歌舞伎役者を演じられるというよりは、僕もそれなりのキャリアがあるので、エンターテインメントや芸にどう向き合うか、どう練っていくのか、それを一緒に考えることはできるなと思っていました。喜久雄や俊介をどう見つめて、鍛えていくか。その中で“何かを引き出せるのか”“何かを突き上げていけるのか”ということの方が、僕にとっては重要でした」とし、「生意気なことを言うとあれですが、亮はこれまでも大河ドラマや、映画にもたくさん出ていると思います。でも、本作の試写を観た後に、すぐに李監督に『これは吉沢の代表作になるね』と言いました。これはおべんちゃらではなく、本作に賭けている姿も知っているし、もちろん流星もすごいです。この重荷を背負うその覚悟と、ある種の執念みたいなものを亮は持ち続けていました。俳優仲間として『こいつ、すごいものを作ったな』と思って、尊敬できましたね」と褒め称えた。

こちらでは全員のコメントを載せきらず残念なのだが、ぜひ会見動画を一度見て欲しい。

映画『国宝』(東宝 配給)は2025年6月6日[金]より全国公開
©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025映画「国宝」製作委員会

映画『国宝』完成会見

©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025映画「国宝」製作委員会

映画『国宝』の主題歌を担当するのは、本作の音楽も手掛ける原摩利彦。King Gnu の井口 理が歌唱で、作詞には坂本美雨が参加!「特別な誰かの人生に喝采を送りたい」という制作陣からの強いオファーを受けた井口の、透き通った歌声と、魂の高揚を感じる音楽が、美しく壮大な『国宝』の物語のラストを締めくくり、感動の涙で劇場を席巻する。

映画『国宝』予告編

©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025映画「国宝」製作委員会

映画『国宝』あらすじ・作品データ

後に国の宝となる男は、任侠の一門に生まれた。抗争によって父を亡くした喜久雄は、上方歌舞伎の名門の当主・花井半二郎に引き取られ、歌舞伎の世界へ飛び込む。そこで、半二郎の実の息子として、生まれながらに将来を約束された御曹司・俊介と出会う。正反対の血筋を受け継ぎ、生い立ちも才能も異なる二人はライバルとして互いに高め合い、芸に青春をささげていくのだが、多くの出会いと別れが運命の歯車を狂わせてゆく…。(2025年/日本映画/174分)
原作:「国宝」吉田修一著(朝日文庫/朝日新聞出版刊)
脚本:奥寺佐渡子
監督:李相日
出演:吉沢亮
   横浜流星/高畑充希 寺島しのぶ 
   森七菜 三浦貴大 見上愛 黒川想矢 越山敬達
   永瀬正敏
   嶋田久作 宮澤エマ 中村鴈治郎/田中泯
   渡辺謙
製作幹事:MYRIAGON STUDIO
制作プロダクション:CREDEUS
主題歌:「Luminance」原摩利彦 feat. 井口 理(Sony Music Label Inc.)

映画『国宝』公式サイトhttps://kokuhou-movie.com/
公式SNS X(Twitter) kokuhou_movie| Instagram kokuhou_movie| TikTok kokuhoumovie
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