ジャコ・ヴァン・ドルマル監督

ジャコ・ヴァン・ドルマル監督が映画『ミスター・ノーバディ』を語る

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Jaco_VAN_DORMAEL第11回東京フィルメックスの2日目に映画『ミスター・ノーバディ』の上映が行われ、上映後にはジャコ・ヴァン・ドルマル[Jaco VAN DORMAEL]監督と観客によるQ&Aの時間が設けられました。

同作は『トト・ザ・ヒーロー』、『八日目』のドルマル監督による、欧州版“インセプション”とでもいうべきSFファンタジー大作。2092年、死を間近にした120歳の老人(=ノーバディ)の脳裏に浮かぶ、様々な人生の岐路を圧倒的な映像で描くもので、2009年のヴェネツィア国際映画祭コンペティションで上映されています。

Q&Aで監督は、作品の誕生経緯を語りました。「完成まで約10年を費やしている。脚本に6年。撮影に半年。ポストプロダクションに1年半。ただ、私の中では、それらの時間がとても早い印象となっています。なぜ、時間がかかったのかお話しましょう。今までの作品と異なるものをつくりたかったんです。まず、構成を考えますが、その際に自分の人生経験を活かします。私は映画も人生も好きなんです。大概の作品はエンディングにむかって、ストーリーが集束してゆきます。でも、実際に生きている時ってそうですか? 違いますよね。人生のヒトコマはそうゆうものではないので、広がりのある話をつくりたいと思いました」

巧みな構成により、時間軸の交錯による混乱はない。というのが概ねの観客の感想でした。そして監督は、「時間軸が交錯する内容のため、お話しておきたい」と前置きし、映画の歴史に。「ルミエール兄弟は現実を写し取る。ジョルジュ・メリエスは幻想的なもので、現実ではないと訴えるタイプだ。私は、ふたりの中間を目指している。現実をそのままスクリーンに登場させるるのではなく、人間がどのように物事を自覚・認識しているか。どう考えるか自由だからこそ、連想したり、思考が飛ぶ様を描きたかった。人間の思考や記憶のメカニズムを提示したかったんです」

筆者は、映画『トト・ザ・ヒーロー』の監督作ということだけで出かけました。なので鑑賞して初めて出演者がジャレッド・レト、サラ・ポーリー、ダイアン・クルーガー、リス・エヴァンスらだということを知りました。ジャレッド・レトは、主人公ニモの成人と“ノーバディ”と呼ばれる老人時代を演じていましたが、浮浪者っぽい姿も披露。これが意外とハマっています。

さて、劇中で個人的に着目したのは、若手俳優のふたり。15歳のニモ役Toby Regbo=トビーは、『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』でダンブルドア校長のティーン時代を演じています。彼はなかなか女子受けのする繊細さを持ち合わせた雰囲気がいいです。そして、15歳のアンナ役Juno Temple=ジュノ・テンプルは、『つぐない』でヒロインの親戚であるローラを演じていました。

余談ですが。昨夏に話題となったレオナルド・ディカプリオ主演の脳活映画『インセプション』は夢を題材にしていましたが、本作は思考と記憶がテーマ。しかも監督が最後に語ったメッセージは、「欧州人は合理的に物事を考えるため、複数の意味が在ると困惑しがちです。日本の方々は、このような作風を受け入れてくれる土壌があると期待しています」というもの。奇しくも、『インセプション』の来日会見のコメントを彷彿させるものでした。もちろん偶然でしょうが。

映画『ミスター・ノーバディ』予告編

原題=Mr.Nobody
日本公開=2011年4月30日
配給=アステア
©Pan-Europeenne Photos: Chantal Thomine-Desmazures

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