左から窪塚洋介、マーティン・スコセッシ、浅野忠信、映画『沈黙-サイレンス-』来日記者会見にて

映画『沈黙』マーティン・スコセッシ×窪塚洋介×浅野忠信の以心伝心

映画会見/イベントレポート

[シネママニエラ]来日中のマーティン・スコセッシ監督が映画『沈黙 -サイレンス-』について会見を行い、日本人キャストのうちキチジロー役の窪塚洋介と通訳役の浅野忠信が同席し、巨匠と撮影した日々を語った。フォトセッション中にも、3名の間のトークはとまらず、息の合った面と以心伝心ぶりを見せつけた。

穏やかな表情のマーティン・スコセッシ監督、映画『沈黙-サイレンス-』来日記者会見にて
瞳キラキラ!

前日には日本美術協会主催の高松宮殿下記念世界文化賞の授賞式に出席したマーティン・スコセッシ監督。渾身作となる映画『沈黙 -サイレンス-』の会見では入場時からマイクを右手に握り締めて、「サンキュー」を何度も言い、登壇。27年間、考え続けてきた遠藤周作の「沈黙」映画化実現の経緯や描きたいテーマについて「語り尽くせないほど言いたいことがある」と前置きしつつ、時間の許す限り熱弁した。

が、早々にこれまでのスコセッシ監督とは異なることに気付く。黒ぶちメガネ×超早口という印象だったが、この日はまったく違った。まず、メガネなし(瞳キラキラ)。それに口調もゆっくり、それに天の声ジョークも飛び出すことも。ということで監督のコメントたっぷりでお届け。

「自分の映画の礎は英語圏――アメリカ映画、イギリス映画、それにイタリアのネオリアリズムが主だった。ところが、ある日、映画により異文化を意識した。それが14歳の時に自宅のテレビで観た溝口健二監督の『雨月物語』。自分はカトリック教徒の家庭で育ったこともあり、それが映画化のモチベーションとなっている。意識しているテーマは異文化、そしてそれによる衝突です」

窪塚洋介、マーティン・スコセッシ、浅野忠信の全身写真、映画『沈黙-サイレンス-』来日記者会見にて
左から窪塚洋介、マーティン・スコセッシ、浅野忠信
「原作との出会いは1988年で、ちょうどキリスト教を題材とした映画『最後の誘惑』を撮っていた。ニューヨークにある教会のポール・ムーア大司教から小説「沈黙」を紹介され、奇しくも読み終えたのが黒澤明監督の『夢』を撮影するために自分が日本に滞在していたときでした」

「言葉では言い表せない領域――信じるとは何か。それはスピリチュアル(精神)を追及する題材になると直感したものの、その術は思い浮かばなかった。脚本は、その数年後に書き始め、2006年に書き終えた。うまくいったのか確信はないのですが、原作で伝えたかったことを落とし込むことが重要だと。20年の歳月があり、夫になり、父になり、旧作の修復作業を経て、私自身が成長した。権利問題に直面し、この企画はエージェントもマネージャーも諦めるようにと。けれども、助けてくれる人々によって、こうして実現した」と話す。この制作自体が信じることで、たどり着いたとも捉えられる逸話が明かされた。

マイクを右手に登場するマーティン・スコセッシ監督、映画『沈黙-サイレンス-』来日記者会見にて
マイクを手に登場!
「制作は山登りのようでもある。ロケ地巡りは巡礼体験のようだった。信ずることは、(劇中の主人公・宣教師)ロドリゴらと同じ試練と思うことでもあり、享受されるものではなく、自ら求めて得るものだと思うに至った。日々、考える、そして書く、作る。そういった過程が信じることの答えに近づくのではないか」と、悟りの境地に言及。

「キャスティングは2009年に長崎のロケーション・ハンティングのために来日してオーディションをした。そのときにキチジロー役と通訳役以外は決まった。その後キチジロー役のオーディションで(窪塚と浅野らが候補となり)、窪塚さんにキチジロー役、浅野さんには通訳役をと決めた。大変な撮影が待ち構えていたなかで、彼らならば役を演じきってくれるという確信がもてた。それに言葉ではなく、通じ合うものがあった。すばらしい面々を集められたので、彼らに頼り切った」として、役者を褒め称えた。

窪塚洋介

窪塚洋介(キチジロー役)、映画『沈黙-サイレンス-』(マーティン・スコセッシ監督)より
窪塚洋介(キチジロー役) Photo Credit Kerry Brown
この企画に接して原作を読んだ。(スコセッシ監督もだけど、原作者は)人を信じ、読み手を信じている。答えを押し付けるでもなく、強く見える?弱く見える?きみにはどう見える?と問いかけているよう。
初めてハリウッド作品に呼んでもらった。監督はスーツ姿で(撮影の)初日に現れて、酒場の薄汚れた場所での撮影だったのに、こうやってと床に横たわるようにして説明してくれた。僕は(監督の)スーツが汚れちゃう!と思ってしまった。でも、(監督の意識に汚れるといったことは)関係ないんだなって。(監督の映画への)情熱の氷山の一角を見た気がしたし、(今も)情熱を持ってやられているメラメラな人なんだと思った。

浅野忠信

浅野忠信(通詞役)、映画『沈黙-サイレンス-』(マーティン・スコセッシ監督)より
浅野忠信(通詞役) Photo Credit Kerry Brown
自分が信じているものを邪魔され、否定されるのは本当に苦しいと思う。とても複雑な話ですし、(原作者には)僕には知りえない思いが根底にあるように感じました。
窪塚くんが言ったのと同様に、本当にびっくりしました。この役をつかんだときに、大きな大きなチャレンジでしたし、うれしく思いました。オーディションの一日は、とても面白かった。2、3回とやっているうちに、本当の撮影のようなとても楽しい気持ちになれた。心で感じる瞬間があった気がした。俳優に常に期待してくれる、それは現場でも感じた。僕らの心から何かがあふれでるのを監督は待ってくれたようでもある。(本作を)フィルムで撮れたことはうれしかったし、監督の中でも重要なことだったのだと思っている。

映画『沈黙-サイレンス-』(KADOKAWA配給)は2017年1月21日[土]より全国公開
公式サイト http://chinmoku.jp/
公式SNS Twitter | Instagram | facebook

2016年10月20日 掲載
2016年10月25日 更新[各キャラクターの場面写真]

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