パルムドールのトロフィーを手にした是枝監督

是枝裕和監督、凱旋会見!「恵まれた環境で撮れた」

カンヌ国際映画祭 ニュース

是枝裕和監督が、映画『万引き家族』(英題 shoplifters )で第71回カンヌ国際映画祭コンペティション部門にて最高賞パルムドールを受賞し5月23日に凱旋帰国され、羽田空港にて記者会見を行い「監督としてはとても恵まれた環境で撮れた」等と振り返った。

是枝裕和監督、凱旋会見!「恵まれた環境で撮れた」
トロフィーを手にした是枝監督

日本人監督の最高賞パルムドール受賞は、1997年の今村昌平監督の『うなぎ』以来、21年ぶり。この受賞を受けて、日本公開館数は、200館から300館に拡大、6月2日、3日の二日間限定で先行上映も決まった。是枝監督はカンヌの授賞式出席後に米国ニューヨークへ渡航。会見は夜遅い時間に実施されたが、約80名のマスコミが詰めかけた。

多くのフラッシュを浴びながら、トロフィーを抱えて登場した是枝監督は「ようやく帰ってスタッフのにこやかな顔をみたら、実感が湧いてきました。来月の公開に向けて、宣伝活動を始めなければならないので、
気合を入れないとなと思っています(笑)」とコメントし、記者からの質疑応答を受けた。

―――日本に帰国して、改めて受賞したことに対しての気持ち、そして帰宅したら何をしたいか?

是枝裕和監督 大きな賞であることが、本日このようにお越しいただいたマスコミの方の数をみてわかります。実感が湧くのはこれからだと思います。シャワーを浴びて一息ついたところですが、メッセージとメールが山のようにたまっているので、お礼の返信をしたいと思います。

―――最高賞を受賞したことによって、テレビや映画の製作者としての心情の変化はあったりするのか?

是枝裕和監督 変わらないです。スタンディングオベーションをいただいたときも嬉しいけど、テレビディレクターの性でつい観察してしまって、純粋に楽しめないんです。それは、僕の強みでもあり、弱点でもありますが、これからも変わらず、テレビにも映画にも関わっていきたいと思っています。

―――映画『誰も知らない』では柳楽さんが主演男優賞、映画『そして父になる』では審査員賞は受賞されていますが、今作との反応の違いは?

是枝裕和監督 前のことはあまり覚えていませんが、『誰も知らない』のときも温かったけど、あのときは子供たちの世話で手一杯で、それだけで終わってしまったという印象なんです。宣伝としては大事だけど、拍手の長さというものは本質的なことではないと思っています。しかし、深夜でも熱い反応だったので、それに対しては前向きに受け止めました。公式上映後に受けた取材では、記者たちから「Touch」と「Love」という言葉が一番多かったんです。それで、届いたなと良い手ごたえは感じました。

―――本作に出演したことで、城桧吏くんが注目を浴びているが、撮影中、城くんに驚かされたことはあるか?

是枝裕和監督 普段は実年齢よりも幼いぐらい子供っぽいのに、レンズを通すと色っぽいんです。僕の演出上、子供には台本を渡さないので、桧吏も理解していない。でも周りの大人をよく観察していて、撮影が進むごとにカット割りを推測し始めたりしていました。そういう観察力が演技に生かされていたと思います。

―――今後も世界に認められるような映画がつくられていく為に、日本ではどうしていくべきだと思うか?

是枝裕和監督 色んな課題があると思います。現在は、オリジナル脚本で企画が通り映画が製作されることは少ないです。新たな監督たちを生みだすことは、僕にとっても刺激になるので、映像集団をつくり新しい監督をデビューさせようとその支援を始めています。自分の身の回りからできることはやらないととは思っています。

―――受賞後、ニューヨークに少し滞在されていたそうだが、その理由は?

是枝裕和監督 色々差支えがあって喋れないんですけど、近いうちに情報が発表されるかと思います。でも、打ち合わせは上手くいきました。そのときは、受賞してよかったなと思いましたね(笑)

―――名だたる監督の作品がある中で自分の作品が受賞された理由について、是枝監督の分析は?

是枝裕和監督 分析というのは、自分で自分の作品を褒めることにもなりますよね? 自慢げに聞こえるようで嫌ですが…(苦笑)。でも、授賞式のあと映画祭公式のディナーの場で、審査員長を務められたケイト・ブランシェットさんに、授賞式後の公式記者会見の際にも仰っていただいたことと同様「演技、監督、撮影などトータルで素晴らしかった」と改めていっていただきました。また、安藤さんの芝居についても熱く語っていて、彼女の泣くシーンがとにかくすごかったと。「今後、私も含め今回の審査員を務めた俳優の中で、今後あの泣き方をしたら、彼女の真似をしたと思って」と仰っていて、その会話から虜にしたんだなとよくわかりました。元々付き合いのあるチャン・チェンは、「家族が見えない花火をみんなで見ているカットが素晴らしかった」といってくれました。他それぞれの方たちとのやりとりが、審査員というよりは、シンプルに作品によって心を動かされたと言ってくれている感じで、良い時間でした。

―――トロフィーは、ニューヨークへは持っていかず誰かに預けていたのか?再び自分の手元に返ってきたことへの気持ちは?

是枝裕和監督 ニューヨークに持っていくには、筋肉痛が昨日やっとなおってきたくらい重すぎて(苦笑)。スタッフに渡して金庫に預けていたので、今日再会しました。思い出したのが、『誰も知らない』のときは、記者会見で柳楽くんにトロフィーを渡すといった感じのやりとりがあったと思いますが、今回は自分の手元に返ってきたといった感じ。一晩くらいは、抱いて寝ようと思います(笑)。

―――映画の中で注目してほしいポイントは?

是枝裕和監督 今回役者のアンサンブルがとてもうまくいきました。自分なりの子供への演出と演出も担える樹木さんとリリーさん、安藤さん、松岡さんも相手の演技を受けるのが上手でバランスがよかった。撮影している中で、惚れ惚れするくらいの演技もみせてくれたりと、監督としてはとても恵まれた環境で撮れたと思っています。

―――映画が出来上がった際に、手ごたえはあったか?

是枝裕和監督 役者が素晴らしかったです。ケイトさんも仰っていた安藤さんの泣くシーンは、カメラの脇で立ち会っていても特別な瞬間だと感じましたし、そんなことが他にも何度もありました。いろんな意味で化学反応も起こり、良い映画が出来たと実感はしましたね。

映画『万引き家族』(ギャガ配給)は2018年6月​8日[金]​よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開
©2018『万引き家族』製作委員会

映画『万引き家族』公式サイトhttp://gaga.ne.jp/manbiki-kazoku/
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