北野武監督、映画『首』完成会見にて

北野武『首』は戦国時代を美化することなく描く!

映画会見/イベントレポート

北野武『首』は戦国時代を美化することなく描く!

北野武監督の最新作となる戦国スペクタクル映画『首』の完成会見が都内のホテルにて開催され、北野監督をはじめ西島秀俊、加瀬亮、中村獅童、浅野忠信、大森南朋が登壇した。監督は、「戦国時代を美化することなく描く!」という方針や、大島渚監督や黒澤明監督から学んだ撮影手法について言及した。

北野武監督、映画『首』完成会見にて
北野武監督、映画『首』完成会見にて

北野武監督が初期の代表作の1本『ソナチネ』同時期に構想し、30年もの長きに渡って温めていた本作は、巨匠・黒澤明が生前「北野くんがこれを撮れば、『七人の侍』と並ぶ傑作が生まれるはず」と期待していた念願の企画の映画化。“本能寺の変”が、戦国武将や忍、芸人や百姓といった多彩な人物の野望や裏切り、運命とともに描かれ、キレ味抜群のバイオレンスと笑いをはじめとした北野のワールドのエッセンスが全開になるという野心作だ。信長の跡目をめぐるさまざまな欲望と策略が入り乱れ、血肉飛び散る“山崎の戦い”から燃え上がる本能寺へと突き進む!

この日の会見の冒頭は、株式会社KADOKAWAの夏野剛代表取締役社長のご挨拶でスタート。「『首』は、日本が世界に誇る才能・北野武監督待望の最新作であり、製作費15億円をかけた大作映画です。本作は、北野武監督が“いつか映画化したい”と長年構想を練られた企画であり、ご自身で原作小説と脚本を書き上げられました。そのような思い入れのある作品で、北野武監督とご一緒出来ることを、大変嬉しく思っております」と述べ、作品の感想として「黒澤明監督の『七人の侍』『影武者』にも通じるスケールと、シェイクスピア作にも通じる悲劇性と喜劇性を併せ持った稀有な作品であり、北野武監督の才能とオリジナリティがふんだんに詰め込まれた作品だと思います」と評した。国内のみならず、“世界のキタノ”待望の新作とあって、カンヌ国際映画祭を含めて海外展開も視野にいれているという。

左から大森南朋、中村獅童、西島秀俊、北野武監督、加瀬亮、浅野忠信
左から大森南朋、中村獅童、西島秀俊、北野武監督、加瀬亮、浅野忠信

錚々たる顔ぶれが並び、時にまじめに時に笑いを交えて、同作について語っていく。

まずは総大将の北野監督のお言葉から。「構想30年というのは、3週間の間違いだと思いますが(笑)。今、時代劇といえば大河ドラマなどで描かれていますが、綺麗な出世物語ばかりで、人間の汚い部分や業というものが描かれていない。この作品は『自分が撮ればこうなる』という発想から作り上げました。完成までだいぶ苦労しましたが、スタッフ・キャストのおかげで作ることができたと思っています。(カンヌ国際映画祭の出品は)知り合いのカンヌの人に聞いたら、『この作品はコンペの枠に当てはまらない、非常に強烈な映画だということで、プレミアという冠をつけて別でやりたい』と言われまして、その話を聞いた時のこの作品は世界的に当たるなと思いました」と話す。

映画『首』完成会見
映画『首』完成会見

さらに「日本の戦国時代を、美化することなく、成り上がりや天下をとるということの裏にある人間関係や恨みやつらみなども含めて、正しくはないかもしれないけれど、一つの解釈として描けたらと思いました」と付け加えた。「やっぱり刀で切るというのは、銃を用いた殺戮シーンより残酷に見えるのかと思います。首をはねたりするシーンは残酷だなとも思いますが、自分で切腹をする時に介錯してもらうのは当時のちゃんとした作法であるということもあるので、残酷といえば残酷なのだけれど、様式美ということでもあるのかなと思います」。

物語のポイントとなるのは、「ここ何年か歴史ブームで織田信長、明智光秀と本能寺の変が取り上げていると思いますが、歴史考証の専門家の方が調べた中で、約80の諸説があるんです。そのなかで僕自身が考えていたのは、『裏で秀吉がかなり動いたのかな?!』と思ったのがきっかけで、映画化しようと思った。そして、最近になって北野組に参加してくれたキャストの皆さんがみんな優秀で、集まることができたら撮れるなと思い、ようやく創れるなと思いました。脚本を書きながら、この役はこの人、と考えながら選んでいった。実際皆衣装をつけたら色合いは綺麗になり、フランスの友人からも「色が凄かった」と言ってもらえて、よかったです」とのこと。

なお、北野監督は、ビートたけしとして織田信長の跡目を虎視眈々と狙い、“本能寺の変”を策略する羽柴秀吉役として出演もしている。当初は出演予定はなかったそうだ。

そして、豪華キャストたちも晴れやかな表情を見せていた。そんなキャストについて北野監督は、「獅童さんは初めてでしたが、あとのメンバーは北野組で撮っていて雰囲気はわかっている人ばかりでした。獅童さんはすごく芝居が好きな人だなあと思って、いずれご一緒できたらと思っていたのですが、今回縁があって出ていただきました。(信長を演じた)加瀬くんは、イメージではない役をやらしたら力を発揮する人と思っています。声をかけると役者さんがスケジュールをうまく調整してくれて、大したギャラも出ないのに(笑)」とウィットに富んだコメントでまとめた。

以下、キャストたちのコメントより、ご挨拶/オファーを受けたお気持ち/撮影前の準備/北野監督だから描けたと思ったこと/特に印象に残っている撮影のエピソードの順で各人ごとにご紹介していく。
※モバイルの方はスクロールで、パソコンでご覧の方は個別ページになります
西島秀俊> <加瀬亮> <中村獅童> <浅野忠信> <大森南朋

映画『首』(KADOKAWA 配給)は2023年秋より全国公開
© 2023KADOKAWA © T.N GON Co.,Ltd

映画『首』ティザービジュアル
映画『首』ティザービジュアル
© 2023KADOKAWA © T.N GON Co.,Ltd

その他の出演キャストと配役
・曽呂利新左衛門(そろりしんざえもん)/木村祐一
・荒木村重(あらきむらしげ)/遠藤憲一
・斎藤利三(さいとうとしみつ)/勝村政信
・般若の佐兵衛(はんにゃさへえ)/寺島進
・服部半蔵(はっとりはんぞう)/桐谷健太
・安国寺恵瓊(あんこくじえけい)/六平直政
・間宮無聊(まみやぶりょう)/大竹まこと
・為三(ためぞう)/津田寛治
・清水宗治(しみずむねはる)/荒川良々
・森蘭丸(もりらんまる)/寛一郎
・弥助(やすけ)/副島淳
・徳川家康(とくがわいえやす)/小林薫
・千利休(せんのりきゅう)/岸部一徳

映画『首』あらすじ・作品データ

天下統一を掲げる織田信長(加瀬亮)は、毛利軍、武田軍、上杉軍、京都の寺社勢力と激しい戦いを繰り広げていたが、その最中、信長の家臣・荒木村重(遠藤憲一)が反乱を起こし、姿を消す。信長は明智光秀(西島秀俊)、羽柴秀吉(ビートたけし)ら家臣を一堂に集め、自身の跡目相続を餌に村重の捜索を命じる。
「働き次第で俺の跡目を指名する。いいか、荒木一族全員の首を斬ってしまえ!ただし、村重だけは殺すな。俺の前に必ず連れてこい!」
首を巡る戦国の饗宴が、今始まる。(2023年/日本映画/131分)
原作・監督・脚本・編集 北野武

映画『首』予告編

© 2023KADOKAWA © T.N GON Co.,Ltd

映画『首』公式サイト
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