映画『母よ、』ナンニ・モレッティ監督インタビュー

ナンニ・モレッティ監督『母よ、』で兄が妹にかける台詞は「自分に言っているかのようだった」

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ナンニ・モレッティ監督、Nanni_Moretti
© Sacher Film . Fandango . Le Pacte . ARTE France Cinéma 2015
[シネママニエラ]カンヌ、ヴェネチア、ベルリンの世界3大映画祭で受賞歴がある、イタリア映画界の巨匠ナンニ・モレッティ監督が映画『息子の部屋』に続けて家族の物語を描く、映画『母よ、』(原題 Mia madre )は、モレッティ監督が前作『ローマ法王の休日』の製作中に最愛の母を亡くした経験から生まれたものであり、映画の主人公に自身の姿を投影させた自叙伝的作品となっていることについてインタビューで語った。以下、ナンニ・モレッティ監督。

映画『母よ、』(原題 Mia madre )予告編・あらすじ

「私は大抵、かなり時間を置いてから次の映画に取りかかります。前の映画に向けていた精神や感情を忘れる必要があるからです。充電期間が必要なのです。

でも今回は、『ローマ法王の休日』が公開されるとすぐに、次の映画(=本作)について考え始めました。映画の中で描かれていることがちょうど私の人生でも起こった時、脚本の執筆に入りました。それはおそらく物語に影響を与えたと思います。

この映画で主役を自分で演じることは最初から考えていませんでした。以前は喜んで演じていましたが、今はもう次から次へと映画で役を作り上げたいという固定観念に駆られることはありません。そういうことはかなり前にやめました。そうして良かったと思っています。

このマルゲリータ役は女性の監督という設定にして、演じてもらうならマルゲリータ・ブイがいいだろうということでした。理由はとても単純で、私が主役を演じるよりマルゲリータ・ブイが主役のほうがはるかにいい映画になるからです。彼女は私よりもはるかに優れた役者ですからね。

とはいえ、本作ではローマのカプラニケッタ映画館の前で、私がマルゲリータの兄・ジョヴァンニを演じているシーンがあります。その中で、マルゲリータに対して『彼女の中にある心理的な決まり事のうち少なくとも1つを打ち破ってみるように』と言っているのですが、それはまるで自分に言っているかのようでした。

私はずっと時がたてば心の奥から自分が引き出されることに慣れるだろう、と考えていました。しかし、それどころか、私がこの道を進めば進むほど、倦怠感が生じてきます。映画は個人的な告白ではないのです。ショットやフレーム、選択肢、演技があって、実際の人生とは違います。

すべての物語はいくらか自伝的です。『ローマ法王の休日』の中で役を演じながら法王について語っていた時、私は自分自身について話していました。ミシェル・ピッコリ演じる法王は、自分は法王が向いていないと感じていましたが、私が『夫婦の危機』でシルヴィオ・オルランドの演技と個人的な物語を描いた時も同じ心境でした。どれくらい自伝的か測りたいと願うことより重要なのは、一つ一つの物語に関して個人的なアプローチをすることです」

ナンニ・モレッティ|Nanni Moretti

(1953年8月19日 – )北イタリアのトレンティーノ=アルト・アディジェ州ブルーニコ生まれ。映画監督、俳優、脚本家。世界中にファンがおり、40歳にして世界三大映画祭すべてで賞を受賞した。

映画『母よ、』(キノフィルムズ配給)は2016年3月12日[土]よりBunkamuraル・シネマ、新宿シネマカリテほかにて公開
公式サイト http://www.hahayo-movie.com/

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