映画『誰もがそれを知っている』アスガー・ファルハディ監督「サスペンス要素は道具であり手段だ」

アスガー・ファルハディ監督「サスペンス要素は道具であり手段だ」

映画インタビュー

イランの名匠アスガー・ファルハディ監督が、最新作『誰もがそれを知っている』(原題 ‎Todos lo saben )について「サスペンス要素は道具であり手段だ」などと語るインタビュー映像が到着した。本日5月7日は、ファルハディ監督の47歳の誕生日だ。

映画『誰もがそれを知っている』アスガー・ファルハディ監督「サスペンス要素は道具であり手段だ」
アスガー・ファルハディ監督
© 2018 MEMENTO FILMS PRODUCTION – MORENA FILMS SL – LUCKY RED – FRANCE 3 CINÉMA – UNTITLED FILMS A.I.E.

アスガー・ファルハディ監督「サスペンス要素は道具であり手段だ」

本作は、人間社会の裏に潜む普遍的なテーマを鋭く描き出す名匠が仕掛ける、家族の秘密と嘘をめぐる極上ヒューマン・サスペンス映画。スペインの故郷で久々に再会した家族と幼なじみ。しかし、結婚式で起きた娘の失踪をきっかけに、隠していたはずの真実をめぐり家族の秘密と嘘がほころび始める…。昨年の第71回カンヌ国際映画祭では華々しくオープニングを飾り絶賛の嵐! カンヌと同日に劇場公開を迎えたフランスでも大ヒットを記録した。

ファルハディ監督は、2012年『別離』、2017年『セールスマン』とアカデミー賞外国語映画賞を受賞した。息つまるほどのスリリングなストーリー展開で観るものを夢中にさせる脚本と、演出の巧みさ。そして人間と社会を多面的に捉える確かな観察眼。日本でも「撮った作品全てが傑作」と語る熱狂的ファンの多い、まさしく現在の中東を代表する存在だ。

同じくアカデミー賞複数回の受賞歴を持つ『ROMA/ローマ』のアルフォンソ・キュアロン監督(57歳)や『レヴェナント 蘇えりし者』のアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督(55歳)といったメキシコ勢をはじめ、『女王陛下のお気に入り』のヨルゴス・ランティモス監督(45歳)といった東欧勢、『万引き家族』の是枝裕和監督(56歳)、『スノー・ピアサー』のポン・ジュノ監督(50歳)といった東アジア勢の名匠たちと並び、今世界が最も注目する監督の一人。

映画『誰もがそれを知っている』(英題 EVERYBODY KNOWS )
© 2018 MEMENTO FILMS PRODUCTION – MORENA FILMS SL – LUCKY RED – FRANCE 3 CINÉMA – UNTITLED FILMS A.I.E.

本作は、監督が母国イランを離れ、初となるオールスペインロケで挑んだ野心作。15年前のスペイン旅行で目にした、壁に貼られた行方不明の子どもの写真に着想を得て以来、ずっと温め続けてきた物語について「すべてはスペインで始まったことだから、構想を練る時にスペインは切り離せなかった。他の国でこの作品を撮ることはできないよ。現実に基づいてるからね」と語る。

そして、“スペインで最も有名な夫婦”ペネロペ・クルスとハビエル・バルデムという、スター俳優たちの豪華キャスティングが実現。数年来の友人である彼らは、母国スペインを舞台とする本作の企画がスタートした4年前から監督への協力を惜しまず、キャラクターは当て書きで執筆された。

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© 2018 MEMENTO FILMS PRODUCTION – MORENA FILMS SL – LUCKY RED – FRANCE 3 CINÉMA – UNTITLED FILMS A.I.E.

ペネロペは演じたラウラ役について「間違いなく、今まで演じた中で一番複雑なキャラクター」と語っているが、2人との仕事について監督は、「最高の経験になった。彼らは几帳面なんだ。毎日撮影現場に来ると必ずと言っていいほど役柄についてたくさん質問してきた。あらゆることに気を配り、実に正確なんだ」と、ラテン系俳優のおおらかなイメージを覆す2人の強いプロフェッショナリズムを明かした。

また、実生活で夫婦であることを演出に生かしたかという点については、「特に指示してないよ」と記憶を辿りつつ、「物語の序盤で2人を見た観客は、(役柄上は幼なじみであり)恋人同士ではないのにある関係性を感じ取れる。そうすることで物語が進行しやすくなる」と、その巧みな演出手腕を感じさせる意図を語った。最後に、本作のサスペンス要素は「映画の別次元の層に到達するための道具であり手段だ」というメッセージで締めくくった。

映画『誰もがそれを知っている』インタビュー

© 2018 MEMENTO FILMS PRODUCTION – MORENA FILMS SL – LUCKY RED – FRANCE 3 CINÉMA – UNTITLED FILMS A.I.E.

映画『誰もがそれを知っている』(ロングライド 配給)は2019年6月1日[土]よりBunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開

映画『誰もがそれを知っている』あらすじ・作品データ

アルゼンチンに暮らすラウラ(P・クルス)が、妹の結婚式のため故郷スペインに帰省しワイン業を営む幼なじみのパコ(J・バルデム)や家族との再会を果たす。しかしその喜びもつかの間、結婚式の後に催されたパーティーのさなか、ラウラの娘イレーネが失踪。まもなく何者かから巨額の身代金を要求するメッセージが届き、ラウラは絶望のどん底に突き落とされる。(2018年/スペイン・フランス・イタリア映画/スペイン語/アメリカンビスタ/カラー/5.1ch/133分 字幕翻訳 原田りえ)
監督・脚本 アスガー・ファルハディ | 出演 ハビエル・バルデム、ペネロペ・クルス、リカルド・ダリン

映画『誰もがそれを知っている』公式サイト longride.jp/everybodyknows
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