『もののけ姫』4KデジタルリマスターIMAX®プレミア試写会舞台挨拶

『もののけ姫』松田洋治×石田ゆり子「俳優人生に大きな影響を与えた作品」

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『もののけ姫』松田洋治×石田ゆり子「俳優人生に大きな影響を与えた作品」

宮﨑駿監督の映画『もののけ姫』が、スタジオジブリ監修の最高画質4KデジタルリマスターとしてIMAXスクリーンに蘇る。10月20日、4KデジタルリマスターIMAX上映を記念して、TOHOシネマズ 新宿にてプレミア試写会が開催され、松田洋治、石田ゆり子、スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーが登壇。28年ぶりの同作について秘話が語られた。

『もののけ姫』4KデジタルリマスターIMAX®プレミア試写会舞台挨拶
『もののけ姫』4KデジタルリマスターIMAX®プレミア試写会舞台挨拶

1997年7月12日の初公開時には、観客動員1,420万人、興行収入193億円という大ヒットを記録した同作。作品の声をやったことについての影響や、その後のキャリアについて問われると、松田と石田はこう話した。
松田「『もののけ姫』という作品がなかった松田洋治と、今の松田洋治では全く違う俳優人生を歩んでいたと思います。私の俳優人生に、もっとも大きな影響を与えた作品であることは間違いないです」
石田「私も同じです。『もののけ姫』の影響は本当に大きいです。例えば、海外で「どんな作品に出ていますか?」と必ず聞かれるんですが、最初に「『もののけ姫』でサンの声をやっております」と答えると、ものすごく尊敬されます。それだけで「ワオ!」や「グレート!」と言われるので、さすがスタジオジブリだなと感じます」

アシタカとサン
左からサン、アシタカ
©1997 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli, ND

そんなふたりがオファーについて振り返った。
松田「僕は、事務所から「スタジオジブリの新作映画オーディションのため、何月何日に◯◯に行け」とだけ聞かされました。(まだ作品タイトルが決まる前の)オーディションだというので、スタジオに向かったものの、(候補者は)自分のほかに誰もいなくて、演出の方だけがいらっしゃいました。『個別オーディションなのかな』と思って、作品の内容やストーリー、そしてアシタカ役の説明を受けました。どう聞いても物語の主役なので、『オーディション用の声のサンプルとして主人公のセリフを収録するんだな』と思いました。まさか自分が主役をやるとは思っていないので、この作品の何かの役のオーディションだと思っていました。それっきり何の連絡もないままで…年が明けて、映画館で『もののけ姫』の特報が流れたんですね。それを観た人から「洋治、すごいね!ジブリの新作の主役やるんだね」と聞いて、知りました。よく覚えているんですが、『エビータ』(1996年公開)を観に劇場に慌てて行ったら、予告から自分の声が聞こえてきて、「主役やるんだ!」とびっくりしました」
石田「ある日、事務所に行ったら鈴木さんが来ていて……。当時のマネジャーと一緒に、別室で話をしました。とにかく『スタジオジブリ』と聞いただけで、頭がワッーとなって、自分の案件とは思えませんでしたし「いったい何が起こるんだろう?」と思っていました。しかも『もののけ姫』のサン役ということで、「なぜ私なのだろう?」とは思いましたが、天にも昇るほどうれしかったです」

アシタカ役の松田洋治
アシタカ役の松田洋治

起用理由について鈴木プロデューサーは、松田について「覚えていないんですよねぇ。ただ、『アシタカの声を誰にするか?』は結構ね、悩んだんですよ。それは、よく覚えています。散々悩みましたし、いろいろな声も聞いたんですよ。それで、松田さんになった決め手が『風の谷のナウシカ』(1984年)のアスベルなんですよ。何でかと言うとね、僕が宮﨑駿に『アスベルの声はどうですか?』と聞いたら、『良かったよ』と言うので、『じゃあ、そうしましょう!』って…、こんな感じでした」
石田については、「今話していて、思い出しました。監督宮﨑駿のタイプだったから、それが主たる理由です。石田さんは、高畑勲監督の『平成狸合戦ぽんぽこ』(1994年)でヒロインの声をやってもらった。その時に、宮﨑駿が石田さんに挨拶した時に、石田さんを前にして宮﨑が鼻の下を伸ばしていたことを、僕は見逃さなかった。実を言うと、その時は『サンを誰にやってもらうか』悩んでいました」と明かしつつ、最終的に「本当にサンの声は良かったんだから! 改めて、ありがとうございました」と感謝。

なぜ、このような流れになったかというと、ふたりがアテレコに苦戦したエピソードが語られたからだ。
松田は、「アテレコは10回以上行っています。洋画の吹替や他の映画の日数と比較すると、考えられないぐらいの回数やりました。リテイクというか、OKが出ないので、一旦収録が止まると大変なことになるんですよ。割とスムーズに行くことは多いんですが、“何か”で止まると、地獄が待ち受けているんです。でも、宮﨑さんの素晴らしいところは、誰に対しても対応が同じことですね。僕だろうとエボシ御前役の田中裕子さんだろうと、相手がどんな方でも、納得がいくまで宮﨑さんはとことんこだわるんです。それは平等ですごいなと思いました」。

映画『もののけ姫』サン役の石田ゆり子
サン役の石田ゆり子

石田も「すごくそう思います! 絶対に甘やかさないし、「ダメなものはダメ」ですし…」と同意しつつ、自身のことは「私はギリギリまで『この子は辞めさせた方が良いのでは?』と思われていたと思います」と吐露。続けて「私は一番大変でした。一番下手でしたし、それを話すと、これから本作を観る方がそれが気になったら嫌だなと思うんですが…。一番覚えているのは、瀕死のアシタカを助ける場面で、何でもないシーンのようで、最も難解でした。記憶では、あそこを最初に録りました…。倒れているアシタカを弟犬が「食べていいか?」と聞いて、サンが「食べちゃダメ」と言うところとか…。「お前、死ぬのか?」というセリフを、最初は「死んじゃダメ!」と、一大事なことのように言ったんです。でも、宮﨑さんからは、サンにとっては「アンタ、パンツ履いてないけどどうしたの?」「あ、そうなの」っていう程度の出来事なので、そういう風に言えと。当時の私には、それがもう難解すぎました(笑)。毎日泣きそうな気持ちでした。夢のようなジブリの仕事なのに、地獄みたいな…そういう不思議な恍惚感がありましたね。洋治くんは、上手なので、どんどん終わっていくんです。私一人で居残りすることもありました」。ここで松田も「僕もアシタカがタタラ場に乗りこむシーンは、途中で宮﨑駿監督から『今日はもう帰れ』と言われて、帰りました。そして別日に録りました」と明かし、一同で驚きつつも懐かしむ。

MCからは「美輪明宏さんや、森繁久彌さん、森光子さんに対しても、そうだったということですか?」との疑問が。これには松田が、「僕とは別録りだったので、分かりません。でも、スタジオで僕らが録っていた時は平等でしたよね?」と石田に同意を求めるると、石田が深くうなずいていた。
ちなみに、鈴木プロデューサーが「森繁さんだけはだめでしたね(笑)。今思い出しましたが、絶対に言うことを聞いてくれないんですよ。アフレコって、絵ができ上がってから声を入れるので、口が開いている時間が決まっているんです。だから、『この長さでこのセリフを話してほしい』と伝えても、森繁さんはオーバーするんです。いくら伝えても無視するんですよ。あれはなかなかでしたね(笑)」と振り返った。

映画『もののけ姫』4KデジタルリマスターIMAXより
映画『もののけ姫』4KデジタルリマスターIMAX
©1997 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli, ND

この日のMCの金澤誠氏によると、そもそも『もののけ姫』の企画は、鈴木プロデューサーが「チャンバラ活劇、時代劇大作にしよう!」と宮﨑監督に提案したことがはじまりらしい。「“今を逃したら、こういうアクションものは二度とできない”と考えたのが大きな理由だった気がします。(制作費25億円という大きな)賭けだとしても、やらなきゃいけなかった(笑)。人間誰しも歳をとりますからね。宮﨑駿がアクション映画をやるなら、あの時しかなかったんです。スタジオジブリが独立をして、アニメーターたちが力をつけてきた時で、…そういう幸運もありました。それと同時に、宮﨑駿がいろいろな作品をやり、『紅の豚』(1992年)がおかげさまで皆さんに受け入れられたので、“お金を使えるのは今だな”となりました。大体プロデューサーはそういうことを考えるんです(笑)」。

最後に、映画『もののけ姫』について鈴木プロデューサーがこう述べた。「お客さんがいっぱい観てくれたのはうれしかったですね。それは素直にうれしかった。それが一番ですよね。『作品を何のために作るか?』と言ったら、『お客さんに観てもらうため』でしょう。その結果、記録に残る興行収入になったのは名誉です。『自分たちのために作るんじゃなくて、お客さんのために作ろう』それを改めて気づかせてくれた作品になりました」。

映画『もののけ姫』4Kデジタルリマスター(東宝 配給)は2025年10月24日[金]よりIMAX限定公開
©1997 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli, ND
IMAX® is a registered trademark of IMAX Corporation

映画『もののけ姫』4KデジタルリマスターIMAXポスタービジュアル
映画『もののけ姫』4KデジタルリマスターIMAXポスタービジュアル
©1997 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli, ND
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映画『もののけ姫』4Kデジタルリマスターあらすじ・作品データ

エミシの村に住む少年アシタカは、村を襲った化け物を退治した際に、死の呪いを受けて右腕が赤黒くなってしまう。その化け物の正体は、何者かに鉛のつぶてを撃ち込まれ、人への憎しみからタタリ神と化した巨大な猪神(ナゴの守)であった。アシタカは、ヒイ様の助言を受け、呪いを絶つためにも猪神が来た西の地へと単身で旅立つ。(日本映画/135分)
原作・脚本・監督 宮﨑 駿
プロデューサー 鈴木敏夫
音楽 久石 譲
主題歌 米良美一
声の出演 松田洋治、石田ゆり子、田中裕子、小林 薫、西村雅彦、上條恒彦、美輪明宏、森 光子、森繁久彌

映画『もののけ姫』4Kデジタルリマスター予告編

©1997 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli, ND
IMAX® is a registered trademark of IMAX Corporation

映画『もののけ姫』公式サイト
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